1.淫らに堕ちていく

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「はい、少し。でも日陰にいたのでなんとか大丈夫でした」 「もしかしてサッカー嫌いだった? ルールも詳しくないみたいだから」 「ええ。どちらかというとそうですね」  わたしは正直に答えた。  サッカーなんてぜんぜん興味がないのに半ば無理やり壱也に連れてこられたのだ。 「おもしろいな」 「なにがですか?」 「正直だなと思って。嫌いなのにわざわざ応援に来るってことは、もしかして壱也とつき合ってる?」  そういう質問、大学でもよくされる。  勘違いする人が多くて困っているんだよね。 「つき合ってません! 無理やり言いくるめられたんです。絶対に楽しいからって」 「楽しくなかった?」 「スポーツそのものが好きじゃないので。苦手なんです。運動音痴で……」 「意外だな。運動神経よさそうなのに」  玲がくすりと笑った。  あ、その顔いいかも。笑うと威圧感が一気に吹き飛んで印象がまるで違う。  初対面だからどことなく警戒していたけど、さっきよりもほぐれた表情に、身構えていたわたしの緊張も少しずつほぐされていった。
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