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玲と話しているうちに、同い年にはない大人の魅力にはまっていく。
知識があって言葉の選び方も大学の男の子たちとはどことなく違う。たったそれだけのことなのに玲に引き寄せられてしまう。
玲に興味を持ったわたしはいつしか玲に特別な視線を送っていた。たまに目が合うと、玲がにやりとしながら少し目を細め、視線を返してくれる。
壱也が一生懸命に話を盛りあげてくれている間も、わたしたちはふたりで目と目で会話をしていた。そのたびに隣にいる壱也に罪悪感を覚えたけれど、わたしは熱を帯びてくる自分の身体を持て余していた。
上昇していく体温、跳ねあがる鼓動、たかぶっていく感情。感じる女としての欲求に戸惑いながらも、チャンスをうかがっていた。
でもそんな必要もなかったみたい。壱也がトイレに行って席を外したとき、玲のほうから禁断の領域に踏み込んできた。
「連絡先教えて」
「カノジョがいるのにいいんですか?」
「たまにはそういうのを忘れたいときもあるんだよ」
そう。このとき玲にはつき合っている女性がいた。だからわたしもほんの軽い気持ちだった。
たしかに玲に興味はあったけど、好きとかつき合いたいという感情までには至っていなかった。どうせカノジョがいるし、連絡が来ることもあまり期待していなかった。このスリリングなやり取りを楽しんでいただけ。万が一会うことになったとしても、ちょっとだけ遊べればいいかなと思っていた。
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