1.淫らに堕ちていく

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 ふたりで遅めの夕飯をすませるとデザートのシュークリームを頬張った。食べながら玲は二本目のビールで喉を潤す。その組み合わせはおかしいと何度か言ったことがあったけれど、相変わらずその習慣は続いている。 「好きだね、甘いもの」 「昔はそうでもなかったんだけどな」 「いつから?」 「明日香とつき合ってから」 「なんで急に?」 「たぶん、明日香が食べているのを見てたからかな。食ってみると意外にうまいなと思うようになった」  こんなとき思う。玲のそんなお茶目な一面を知っているのはわたしだけというささやかな優越感。 「玲ってかわいいね」  そして玲と一緒にいるときだけ、わたしは素直で従順な女になれる。  ふたりはお互いに影響し合っているのだと、最近とくに感じるようになっていた。  デザートタイムが終わると、わたしはシャンプーの香りが残るバスルームへ足を踏み入れる。  シャワーのお湯を全身に受けながら、これからの行為を想像し、わたしは念入りに身体を洗った。  わたしの身体は玲しか受け入れられない。彼以外の男性に惹かれないし魅力も感じない。抱かれることなんて想像できない。それくらい玲だけだった。
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