1.淫らに堕ちていく

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 十一月の金曜日。  今日は冬の訪れを感じさせるような風の冷たい日だった。  大学の授業が終わり、駅に向かう途中。背後から声をかけられた。 「明日香(あすか)、今日の夜、飲みに行かねえ?」  そう言ったのは友達の武藤(むとう)壱也(いちや)だった。  壱也はわたしの隣に並び、一緒に歩く。 「ごめん、今日はパス」 「デート?」 「そういうんじゃないんだけど」 「なに?」 「なんとなく、かな?」 「ふーん」  地方から上京し、ひとり暮らしをしているわたしは大学二年。壱也とは同い年。入学直後からのつき合いで、なんとなく気が合ってよく一緒にいる。 「でも明日ならいいよ」 「逆に俺がだめ」 「またイベント?」 「まあね」  イベントとは合コンのこと。壱也はかなりの合コン好き。カノジョのいない期間は毎週末のように『イベント』に励んでいる。  よく飽きないなと思う。いったいどれだけやれば気がすむのか。  だけど今週末の『イベント』開催は土曜日らしく、そのため金曜日の今日は暇らしい。だから空いた時間をわたしで埋めるつもりなのだろう。
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