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車は夜の道を颯爽と駆け抜ける。乗り心地もいい。
「霧島さんは、なかなかのやり手だよな」
「そうみたいですね。仕事のことはよくわかりませんけど」
いきなり玲の話題を振ってきたのは驚いたけれど、玲とはもうなんの関係もない。できれば誰にも過去は知られたくないけれど、真鍋課長ならいいと思い直していた。
「去年、海外に行ったやつは?」
「その人は霧島さんと別れたあとにつき合った人です」
「でも霧島さんはたしか……」
珍しく言いよどんでいる。
きっと玲が結婚していて、子どももいるということを言いたいのかな。
「……そうです。真鍋課長の想像通りです。奥さんがいることを知っていました」
いざ言葉にするとなると勇気がいった。
真鍋課長は少し考え込んでいたようだったけれど。
「片瀬もいろいろあったんだな」
それだけ言って、あとはハンドルを握ったままだった。
「霧島さんとはもう関係ありません。仕事上のつき合いだけです」
無言になった真鍋課長に申し訳ないと思い、そう言った。
「霧島さんはそうじゃないみたいだけど」
「そんなことないですよ」
「でも帰り際、電話すると言っていただろ?」
「あれは……」
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