12.わたしの心を乱す男

12/15
382人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
 車は夜の道を颯爽と駆け抜ける。乗り心地もいい。 「霧島さんは、なかなかのやり手だよな」 「そうみたいですね。仕事のことはよくわかりませんけど」  いきなり玲の話題を振ってきたのは驚いたけれど、玲とはもうなんの関係もない。できれば誰にも過去は知られたくないけれど、真鍋課長ならいいと思い直していた。 「去年、海外に行ったやつは?」 「その人は霧島さんと別れたあとにつき合った人です」 「でも霧島さんはたしか……」  珍しく言いよどんでいる。  きっと玲が結婚していて、子どももいるということを言いたいのかな。 「……そうです。真鍋課長の想像通りです。奥さんがいることを知っていました」  いざ言葉にするとなると勇気がいった。  真鍋課長は少し考え込んでいたようだったけれど。 「片瀬もいろいろあったんだな」  それだけ言って、あとはハンドルを握ったままだった。 「霧島さんとはもう関係ありません。仕事上のつき合いだけです」  無言になった真鍋課長に申し訳ないと思い、そう言った。 「霧島さんはそうじゃないみたいだけど」 「そんなことないですよ」 「でも帰り際、電話すると言っていただろ?」 「あれは……」
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!