1.淫らに堕ちていく

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◇◆◇  玲と初めて会ったのは半年前の初夏。  壱也が趣味でやっているサッカークラブの試合の応援に行ったときに紹介された。 「玲さん。こいつは同じ大学の片瀬(かたせ)明日香」 「初めまして。片瀬です」 「霧島(きりしま)です」  それだけ言って、ふたりで固まった。  玲の第一印象はあまりいいものではなかった。口数が少なくて冷たそう。そんなイメージ。もともと人見知りであるわたしの性格のせいもあったけれど、打ち解けられる気がしなかった。 「玲さん、すみません。こいつ、あまり愛想がよくなくて」  壱也がからかうように言う。  なんなの? それってわたしだけじゃないでしょう。向こうだって、同じくらい愛想ないんですけど。  すると、ふてくされているわたしに気を使ってくれたのか、玲が話題を変えた。 「壱也が女の子を連れてくるなんて初めてだな」 「そうでしたっけ?」 「そうだよ」  玲と壱也が所属しているクラブの大半は社会人。プロを目指しているわけではなくて、あくまでも趣味の域。その活動が週に一度行われているそうだ。  といっても仕事帰りの夜に学校の校庭やスポーツ広場に集まって軽くサッカーをする程度のもの。だけど、こういったクラブはこの地域にけっこうあって、年に一度ちゃんとしたリーグ戦も行われていると前に壱也から聞いていた。
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