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「玲さん、カノジョは元気ですか?」
「ああ」
「てことは、うまくいってるんですか?」
「それなりにな」
壱也は、傍から見ても玲をとても慕っていることがよくわかる。玲にしきりに話しかけていた。その横でわたしはしばらくふたりの会話を聞いていた。
「前にあんまりうまくいってないみたいなこと言ってましたけど、順調ならよかったですね」
「ああ」
玲は、愛想はなくてもルックスはいい。なので、そういう相手がいることに違和感はなかった。
気になったのは、壱也の問いかけに玲が多くを語らないこと。
照れているのかな? このときはそう思っていた。
そしていよいよ試合がはじまろうとしていた。
玲は仕事が忙しく、クラブにはめったに顔を出さないらしい。当然、練習もしていない。そのためいつも試合には出ず、ベンチでの応援係なのだそうだ。
一方、壱也はスタメン。だけど技術力というよりも若さが理由で選ばれたようなものらしい。
「がんばってね」と見送ると、長い試合がはじまった。
今日は少し蒸し暑い。
わたしは小さな日陰をなんとか見つけ、少し離れたところから応援することにした。知り合いがいないのでひとりぼっち。なので応援というより見学といったほうがいいかもしれない。
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