1.淫らに堕ちていく

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 しばらくぼんやりと試合を見ていた。  すると壱也がドリブルしながら走っているのが見えた。がんばって目で追ってはみたけれど、あいにくルールなんてぜんぜんわからない。いつの間にかボールは相手チームに移っていた。 「はぁ、疲れたな」  興味のないスポーツ観戦はさすがに熱中できなくて、なんとなく口に出たひとりごと。 「大丈夫?」  なのに返事があって、びっくりする。  いつの間にか玲がわたしの横にいた。  そばに人がいるなんて気がつかなかった。情けないセリフを聞かれて恥ずかしい。  すると玲がペットボトルのお茶をわたしの前に差し出してきた。 「飲むか?」  玲がクラブ用のクーラーボックスに完備していたものをわたしのために持ってきてくれたようだった。 「……あ、ありがとうございます」  お礼を言って受け取る。だけど玲はなにも言わず、さっさとわたしから離れていく。  口数少なすぎじゃない? 無愛想なのはやっぱり向こうのほうだと思うんだけど。  わたしは壱也の言葉を思い出し、心のなかでつぶやいた。
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