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第1話 ポラリティ
「もう別れましょ…」
女は男に言った。
「なんで完璧な僕の何がいけないんだ?!」
女は呆れた顔で男に言った。
「そう言うところよ…」
そう言い残し玄関の扉を閉めた。
「どういうところ…だよ…」
そう言って男は膝から崩れ落ちた。
すぐ男は立ち上がり言った。
「気持ちを切り替えればいい他に自分の事を分かってくれる人が見つかるはずだ!」
そう言って気分を晴らす為にコンビニへと足を運んだ。
「どれがいいだろう…」
そう男が悩んでいる右で何かもそもそしている若い男がいた。
「(あれは…万引き?)」
そう思い男は若い男の腕を持ち正義感溢れる声で叫んだ。
「万引きをしてはいけない!」
若い男は両手をあげて男を睨みつけ言った。
「してねぇーよ」
若い男の手に何もないことを男は確認し言った。
「そうでしたか、誠に申し訳ない…もそもそしていたから万引きをしたのかと思い思わず声をあげてしまった」
そして騒然としている周りを見て言い深く頭を下げた。
「迷惑をかけてしまった、申し訳ない」
男は買い物に戻り目当てのヨーグルトを買い家に帰っていると後ろから声をかけられた。
「ちょっといい?あんた」
振り向くと先程の若い男がいた。
「先程の…申し訳なかったな…で何の用だ?」
「あんた名前は?」
「相坂秀司(あいさかしゅうじ)だが…」
「いゃいゃあんたには感謝しなきゃなって思ってな」
「感謝?いいことなど私はしていないが…」
そう言うと若い男はズボンからコンビニの商品を取り出した。
「貴様やはり万引きを!」
「あんたが早々に諦めて体を調べなかったから逃れられたよありがとうな」
若い男は手を振りながら言った。
「今からコンビニに戻るぞ」
秀司はそう言って若い男の手を掴むと若い男は手を捻り秀司の握っている手を弱め掴んでる手から逃れた。
「何?!」
若い男はそのまま秀司の手を掴み後ろに回り地べたに抑えつけた。
「ぐっ…」
若い男は上に乗り秀司の腕を抑えつけながら言った。
「あんた面白いんだよね…」
秀司は勢いよく言った。
「何をするつもりなんだ!」
若い男は飄々とした顔をしながら言った。
「いゃ何も…ただ…」
秀司は怖々に若い男の言葉を繰り返す。
「ただ…?」
若い男は秀司の右頬に顔を近づけて言った。
「面白いあんたが欲しくなってさ〜」
秀司は理解できず若い男に聞いた。
「何を…言ってる…?」
男は秀司の質問を無視しマイペースに自分の事を話始めた。
「あっ!そうだ!自分の紹介してなかったな!俺は籔沢悠(やぶさわゆう)」
「欲しくなったってどう言う意味だ!」
また悠は秀司に顔を近づけて言った。
「そのままの意味だよ…ねぇ…俺と取り引きしない?」
「取り引き…?」
秀司が聞き返すと悠は上半身をあげてポケットの中から何かを出した。
「俺さ今ナイフ持ってんの…どういう意味かわかる?」
悠は狂気的な笑みを浮かべながら言った。
秀司は低めの声で言った。
「いつでも殺せるとでも言いたいのか?」
「そう…でも俺の望みは殺したいわけじゃない人間的に面白いあんたが欲しいってこと」
「だから何をしろと?」
秀司はもったいぶる悠に聞くと悠はスっと言った。
「俺の恋人になってよ」
秀司は何を言われたのか理解できなかった。
「は?」
秀司が理解してないことを理解し悠は改めて言った。
「だから俺の恋人になってよ…ならないって言うなら欲しいものが手に入らないってわけだから〜殺せばいい話だろ?」
秀司は改めて自分で噛み砕き今迫られてる選択肢を口に出して言った。
「つまり恋人になれば命は助かる…ならなければ死ぬってことか…」
「そう!どうする?」
「それで助かるのならそちらを選ぼう…」
悠は口を開けて言った。
「意外だなぁ〜こっちを選ぶんだ…」
「今死にたくはないからな…」
悠の手が緩んだ瞬間に秀司はそのまま立ち上がった。
「いてっ!」
秀司は悠に顔を近づけて言った。
「但し、僕が自分の正義を曲げるのはこれっきりだ!真摯に君にも向き合うから覚悟しとくんだな」
悠は秀司の圧に少し後ずさりをしながら返事をした。
「う…うん、わかった」
そう言って秀司は帰ろうとすると悠は止めた。
「腰抜けたんだけど…助けてくんない?」
「はぁ…」
秀司はため息をつき座り込んで悠の手を肩にやりおぶっていくことにした。
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