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だからこそ……。
噂が立ちすぎないように気を配っていた。それを、主みずからこのように動いては――。
しかし、主の意には背けない。
道を外れようとも、生かされている身の上である以上、黙ってつき従うしかないのだ。
「さあ、世龍。もうここに用はない」
鏡の中から、急かす声がする。
「はい。そうですね。騒ぎになる前に立ち去らねば……」
仕事は終わった。
ただ、それは終えても、終えても、永久に――、終らない──、もの。
「姉様。まだ、娘を用意しなければならぬのでしょうか?」
幾年こうして人の世を彷徨っているのだろう……。
治療と称して、世龍は術をかけた。
病は癒えたように見える。
そして、世龍の名が評判となる。
名医の元には、人が集まり、主にささげる娘を探す手間が省けた。
闇神様と恐れられている主のために、腕の良い医師を演じただけのことなのに。人間たちは……世龍を、神と崇め涙を浮かべた。
浅はかな。
それは、誰か。
己か、人か。
「お前の体がなければ困る。世龍、しっかりしておくれ」
世龍の迷いを見越したように、手鏡の中から戒めの言葉が繰り出された。
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