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仕方ないで、片付けられる自分の境遇が腹立たしい。
いつか、きっと抜け出してやる。心に小さな野心を秘めて、沙耶はじっと耐え忍ぶ。
「ああ、皆が皆、お前さんみたいに聞き分けがいいと、こっちも助かるんだがよ」
ハッと声をあげ、人買いは馬を鞭打つ。
ガラガラと轍の音が鳴り響き、乗る荷馬車がギシギシ軋む。
他の邑でも商うから馬車で来たと、商人ぶる男。
歩かなくて済むんだ、感謝しろと言われても――。
道連れができる、仲間ができる。
人買いが舌を振るうたび、沙耶は、背負った覚悟を崩されるような、違和感に襲われた。
独りで耐えたかった。
自分独りで苦しみを背負えば……、この世から、同じような境遇が……なくなるのでは……。
などと、余計な義務感が生まれていた。
日が暮れてしまうと人買いは、御者台で急いている。
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