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ミミズがのたくった様な文字に困惑していると、髙橋は自嘲気味に笑う。
「左が祖父、右が父の雑記帳です。二人とも、突如不眠に悩まされたようで、文字に乱れがあるんです。日付を見てください。どちらも数日間分の日記に文字の乱れがあるでしょう? ですが、ほら、不眠が解消されたらしき後の文字を見て下さい」
「あっ」
どちらも流麗な文字が続いている。
「なるほど。確かにそうです。ですが、私に睡魔を呼ぶなんて……」
「祖父と父は、田中さんのお祖父様とお父様に助けられたと書いてあります」
ミミズ文字のどこをどう読んだらそう読めるのか疑問だった。
「田中さんのお祖父様とお父様は、商店を営まわれてましたね。町内の困り事を解決なさっていたと伺いました。それでうちの者も頼ったと聞いています」
髙橋は話しているうちに顔色にほんの少し赤みが差してきた。
「その日記には睡魔の捕まえ方が書いてあるんですか?」
「ええ。勿論です」
「どんな方法です?」
「お教えしたら、捕まえて貰えますか?」
薄暗い目に思わずぞっとして、思わず「善処します」と答えてしまった。
「有難うごさいます。その方法はーー」
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