5 郵便局と基金

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 ライトニングと会った翌日、サンライズは自室で報告書を読んでいた。  大嫌いな点滴がまた始まったので、気がまぎれるのはありがたい。  それに、この内容は本当に興味深かった。  ライトニングの居酒屋時代の話から入局の経緯を読みながら、自分の事を思い出していた。  コイツも、支部長にスカウトされたのか。  オレも、そうだったな。  その後には分厚いデータレポート。ライトニングのパワー計測結果が細かい数値で載っていた。  対人瞬間影響値、振れ幅、男女別影響力、年齢別、影響持続時間、頻度、コントロール値、二四時間計測値……さまざまなデータがグラフや表になっているが、自分の計測結果を今までさんざん見せられていたのでだいたいの意味はわかった。  相手に働きかける力は、自分とあまり変わらない。年齢別・男女別では一部、彼の方が強いくらいだ。  居酒屋でけっこう鍛えてきたからだろうか。  影響の持続時間は、長くても十分以内、案外短い。  一番の問題は、ここぞと言う時にその力が全然発揮できない時がままある、ということだろうか。  逆に、起きている時でも寝ている時でも、無意識に相手に働きかけている時があることも判明した。  スキャニング能力については、『0』とあった。皆無だ。  ここに着いてから、ライトニングにも『力』についての説明があった。  彼は終始、きょとんとして聞いていたが、急に笑い出したそうだ。 「そんなことできっようなら、だあれも苦労しねえべ」  ついお国言葉に戻っていたらしい。  つまり、今まで全然(それ)を意識したことがなかったのだ。  サンライズに、そんな彼の能力開発の指導をしてくれ、というのだから驚きだ。  しかもこんな時に。  オレが何の役に立つというんだろうか。  力を全く使えない『シェイカー』なのに。居酒屋にも勤められない。  これと同じような無力感にとらわれた記憶がよみがえる。  あの時は、できると思っていたのに、突然切り捨てられたのだ。  まったく逆の話なのに、なぜ急に思い出したんだろう?  
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