第一章 価値観

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御神、亜理沙、妙子、半藤、三堂の五人は学校の近くのファミリーレストランへ向かっている。 「御神はテストどうだったんだ?どうせ今回も良いんだろ」  半藤が御神にテストの出来を訊いた。 「まぁまぁかな」 「お前のまぁまぁは俺にとってはとても良いだがな」 「確かに。・・・・・いえ、とても良い位じゃないかな?」 「何だと!亜理紗!」 半藤君と大谷さんのいつもの痴話喧嘩を僕は見て見ぬ振りをした。   御神達はお目当てのファミレーレストランに到着した。 外から店の中を見ると客は会社員、男連れ、家族、学生で混み合っている事が判る。 五人が店の中に入り、店員に案内され、席に着いた。 「さーて、何食おっかな」   半藤がそう言いながらメニューを手に取り、目を通した。 「妙子、何にする?」 亜理紗もメニューを手に取り、妙子も見えるように広げた。 「俺、きーめた。ほらよ、御神、三堂」   半藤がメニューを御神に渡した。 5分後、全員注文も終わり、御神達は雑談していた。 「半藤、そのブレスレッドは何だ?いつもは身に着けてはいないじゃないか」   御神が半藤の手首に付けてある天然石で出来た群青色のブレスレッドについて疑点を持った。 「ああ、これか。これは前に亜理紗と秋山さんで買ったお揃いのブレスレッドだ。まぁ、今日は何となく着けて来ただけだよ」 「へー、いつの間に」 「三人共色違い何だよ」 妙子がそう補足した。 「なぁ、御神も仲間になったから、また、皆でお揃いの何か買わないか?」   半藤がそう提案した。 「そうね。それいいかも」   亜理紗もそれに乗り気だ。   僕もそれに含まれているのか? いや、含まれていなくてもガッカリはしない。 「三堂君も買おうね」   亜理紗が三堂にそう促した。 「・・・・・えっ、あっ、はい」   嬉しいというよりも最初は戸惑った。 僕はもうこのグループのメンバーの一派な一員なのか? だんだん、じわじわと嬉しさが込みあげて来た。 暫くし、御神達は運ばれて来た料理を食べていた。 御神がふとスマホを見た。 「えっ・・・・・」 「どうしんた?御神」 「えっ、ああ、亜理紗、ちょっと来てくれないか?」 「えっ、何よ」   そう言って二人は席を立った。 僕は御神君の反応を見て、何かただならない不吉な予感がした。 半藤君も秋山さんもそんな様な感じだ。 「どうした、御神?」 「うん、何でもない」 「なんでもないって事ないだろ」 「取り敢えず後で話す」  そう言って、大谷さんと御神君は店の外へ出て行った。 「どうしたの?蓮司」 「亜理紗・・・・・今、安藤警部から山鍋社長が遺体で発見されたというメールが来た」 御神が声を震わせながら答えた。 「なっ、なんだって!・・・・・」 「俺の推理が正しければ、恐らく、山鍋社長は殺害されたんだ」 「えっ、どういう事・・・・・?」 亜理紗が声を震わせながら訊いた。 「あのツインホテルの事件の真相は山鍋社長が黒幕で終わりではなく、まだ続いていたという事だ」 「えっ、どういう事・・・・・?」   亜理紗が今度は驚きながら同じセリフを繰り返した。 「あのツインホテルの四つの事件までの黒幕は山鍋社長で、あの事件にはまだもう一つの事件があり、それは山鍋社長を殺害する事だったんだ。つまり、それもあの誇大な事件の当初から計画の一部で、あのツインホテルの事件は最初から五つの事件で構成されていたという事だ」 「えっ、じゃぁ、やっ、山鍋社長は元々影の共犯者に利用されていたという事なの?」 「ああ、恐らくそうだ。そして、山鍋社長を殺害したのはおそらく遠野さんかもう一人の影の共犯者だろう」 「だけど、影の共犯者達は何故山鍋社長を・・・・・いや、影の共犯者に山鍋社長殺害を依頼した人物がいるって事かしら?」 「ああ、その殺害依頼の理由で考えられる人物は二通りだ。一、前々から山鍋社長に対して私念を抱いていた人物。二、山鍋社長が死んで今後、自分に有益が働く人物。大企業の社長となると立場的に他人から恨みを買われる可能性が大きくなる。しかし、俺の目が確かなら俺の知っている山鍋社長はそんな人格の持ち主ではない。よって、影の共犯者に山鍋社長殺害を依頼した人物はパターン二のこの状況で山鍋社長に死ぬ事によって、一番得をする人物だ。そして、俺の推測と勘が正しければその依頼者は恐らく・・・・・笹野誠だ」 「・・・・・えっ・・・・・」  亜理沙が呆然としている。声を発せない。 「あっ、あのーすみません、君、御神蓮司君ですよね?」 亜理紗が唖然としている中、唐突に真剣な表情の御神に見知らぬ男が声を掛けて来た。 「そうですが、貴方は・・・・・・?」 「あっ、あのー、僕を助けて頂けませんか?」  男は御神から目線を逸らして見つめそう放った。
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