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第十一章 繋がり
今日は豪雨だ。
これは僕の心の涙を代弁しているのか。
そう言えば、今日は何となく、朝の情報番組の占いを観てしまった。
僕のカニ座の運勢は十二位だった。
それが現実になってしまうのか?
今、目の前の状況は果して現実か夢なのか?
夢なら早く覚めて欲しい。
しかし、体に肌寒さを感じる。
意識がはっきりとある。
夢の様な急展開や急に場面が変わる事にもならないし、例え急展開になったとしても、夢の様に驚愕する事はなく、平然と進む事を脳が許す事もないだろう。
僕達の登場に慌ててパソコンの電源を切る人物の姿を見てしまった。
今も目の前にいて、無言で視線を合している。
その人物は唐突の登場に緊張しているのか?
それはそうか、耳が赤い。その姿を見て呆然とするしかなかった。
なんなんだ、この悲壮感とも取れる感覚は?
今から何が起こるんだ?
御神君は今からとんでもない事を言うのだろうか?
折角、最近になって今まで築き上げてきた友好関係が今日で終わるのか?
身震いしている僕の目線の先には見慣れた人物がいた。
「何を言っているんだ、御神。俺がフクマデン?」
刹那的とは違う真剣な眼差しで問う。
「ああ、もう俺には全て解っている。君が南野さんを殺害したフクマデンという事も、ツインホテルの時の影の共犯者と繋がっている事も」
二人は出会ってからかつてないほど敵対している。
空気が痛い。
「・・・・・だから、何を根拠にそんな事言っているんだ。俺達、友達だろ?」
「・・・・・ああ、俺達は友達だ。しかし、友達でもどうしても言わなくてはならない事が世の中にはある。そして、今から俺が君に言う事は「友達でもどうしても言わなくてはならない」事だ。それに君がフクマデンではないというのならば何故、君がこんな時間にこんな所にいるんだい?」
「・・・・・俺は家のパソコンの調子が悪かったから、少し調べ物をしに学校に来ただけだよ。ちょうど夏休みだから誰もいないと思って」
僕も加戦しようにもなかなか言葉が出ない。
「調べ物か?だったら何故わざわざ学校へ来るんだ?区の図書館にでも行けば良いだろう」
「・・・・・三堂、お前もなんか言ってくれよ。どうやら御神がつまらない勘違いをしているようだ」
いつも僕を貶していたのとは違う様だ。
「三堂にはまだ何も話していない。つまり、君と一緒でフラットの状態で初めて君が犯した罪を知る事になる。従って、俺の推理を聞き終わり、俺と君、どっちが正しかったのか、その最終判断を三堂に委ねようと思っている」
重大任務を授かった。
僕の判断で半藤君の未来、いや、僕達の未来が決まるのか?
そう考えると、正常な答えを出す自信がなかった。
「・・・・・そこまで言うんだったらお前の推理を聞いても良いが、幾ら友達だからといって後で「間違っていました、ごめんなさい」で済まされない事もあるんだぞ。今なら引き返せる。もし、そうしたら俺もここまでの事は見過ごしてやるし、このままの友達関係も維持出来る。しかし、これ以上前に進むのならば、俺はお前の事を人権蹂躙と見なして許さないし、友達だとももう思わない。さぁ、ご決断は?」
御神君は口を閉ざしたままだ。
「・・・・・答えは「俺達は友達ではない」か。いいだろ、お前の珍説を話してくれよ」
「俺と君はいつまでも友達だ。しかし、世の中には友達でも言わなくてはならない事はあるんだ。そして、俺は今俺の推理を聞き終わった後、君が俺に平伏す姿を想像出来ている」
「相変わらずお前の高慢な性格は直らないようだな」
「ああ、それが俺という人間を形成する上で重要な性質だからな」
「ふん、猪口才な。・・・・・まぁ、そんな事より話を進めてくれよ。このままのペースが続くようだったら日が暮れてしまう」
「そうだな、分かった。但し、俺が話したい順番は俺が決めても良いか?」
「どうぞ、ご自由に」
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