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「だったら、まずは南野さんが則島を殺害した方法から教えてくれ」
「ああ、分かった。しかし、その前に大きな前提を話さなければならない。それには君も登場しなくてはならないがそれで良いか?」
「好きにして」
「分かった。その大前提の内容を何故、話さなくてはならないかというと君と南野さんのアリバイ作りの為なんだ。そして、そのそれぞれのアリバイを作る為には南野さんは君が必要で、君は南野さんが必要だったんだ。つまり、お互いが干渉し合う相互関係が必要なんだ」
「アリバイ作りね」
「ああ、そして、君と南野さんがアリバイを作る為にはMDのプレイヤーの他に、もう一人のプレイヤーが必要となってくる。そして、そのプレイヤーこそ遠野さんだったんだ」
「へぇー、あの遠野さんがね」
「ああ、俺より君の方が分かっている事なのに惚ける演技が上手いな。君は既にそのアリバイ作りの方法を知っていると思うが、ここにいる三堂に説明しなくてはならないから、詳しく話す事にしよう」
「いや、俺もそのアリバイ作りの方法、つまり、お前の頭の中の妄想は知らないから、ゆっくりと聞こう」
「そうだな。時間はたっぷりとあるしそうしよう。ネット上の事は当然顔が見えないから、誰がやっているのかが判らない。つまり、そのIDをその時、本当に使用していたのは誰だったのかは確証は持てない。しかし、俺が今から言う事はその事になる為の証拠がちゃんとある。それは後で話そう。まず、南野さんの代わりに俺がDAIを第一回目から今、第三回目のMDが終了するまでやっていた。そして、次にSAO。これは実は、第一回目のMDの時点では南野さんがやっていたんだ。そして、第二回目は君がやっていたんだ。そして、第三回目も君だ。だから、さっき慌ててパソコンの電源を切ったんだろ?そして、KYUM。これは第一回目のMDの時点では遠野さんがやっていて、実はやはり第二回目のMD終了した数日後、君が言った通り、第二回目のMDでのKYUMは南野さんがやっていたんだ。そして、君が代わりにSAOをやっているのだから、遠野さんは第二回目には何もしていなかったんだ。俺が感じた第一回目と第二回目のKYUMに対しての違和感はこれだったんだ。そして、KYUMは第二回目の時点で敗北し、当然、第三回目のKYUMはもうやる必要がない。つまり纏めると、
DAI 第一回目 御神蓮司
第二回目 御神蓮司
第三回目 御神蓮司
SAO 第一回目 南野浩平
第二回目 半藤貴新
第三回目 半藤貴新
KYUM 第一回目 遠野岳
第二回目 南野浩平
第三回目 なし
君は第二回目、第三回目のSAOで第一回目のSAOの言葉遣いをそのまま演じていたが、南野さんの方は第二回目のKYUMで、第一回目のKYUMである遠野さんの言葉遣いを演じる筈が、慣れない言葉のせいで、第一回目のSAOがそのまま出て決まったんだ。つまり、三人二役、いや、DAIは元々南野さんでその代役を俺がやっていたのだから俺を含む四人三役でDAI、SAO、KYUMが行われていたんだ。一日目のMDの際、君は俺達と共に時間を過ごし、今回の事件とは関連性のない事を印象付けたんだ。そして、もう一つ重要な事を知る為にその場に居合わせた。その事についてはまた後で話そう。君は一回目のMDが始まる前にやらなくてはならない事があった。それは、俺と南野さんを会わせて、俺にDAIを代行させる依頼をする為のきっかけを作る事だ。その為に君は、テストが終わった七月十日、ファミレスに行こうと誘い、俺達を自分が指定したファミレスに誘導し、俺達と南野さんが出会う機会を作った。そして、南野さんは俺にDAIを任せ、自分は則島をMDで負かして、正当な殺害される理由を作る為に、SAOを使い、MDに参加していたんだ。そして、あるトリックからまんまと則島を負かした南野さんは第一回目と第二回目のMDが開催される期間に直接、則島を殺害したんだ。そして、第二回目のMD、君はSAOとしてMDに参加し、第一回目に南野さんがやった同じトリックを使い、KYUMだった南野さんをMDで負かして、正当に殺害される理由を作ったんだ。そして、そのトリックからまんまと南野さんを負かした君は第二回目と第三回目のMDが開催される期間に直接、南野さんを殺害し、君は第一回目のMDの時、俺と一緒にいる事でMDには参加していない只の高校生を印象付けたんだ。そして、先程まで行われた第三回目のMDで俺にSAOが半藤貴新だとはバレない様、最後の質問で全ての嘘を消化したのにも拘らず嘘の本名を回答として出したんだ」
「けど、一体どういった理由で主催者Xは南野さんに第二回目のKYUMをやらせたんだ?だって、仮に南野さんが則島を殺害した犯人だとしたら、第一回目のMD終了後に則島を殺害した後に、わざわざKYUMを交代しなくても、第二回目以降もSAOを自分がやれば良い事だと思うだろうし、そのまま遠野さんがKYUMをやれば良いと思った筈だろ。いや、南野さんが則島を殺害した後、もう目的を果たした南野さんはMDに参加自体しなくても良いだろう。・・・・・いや、待てよ。その場合、主催者Xは「遠野は貴方の代わりにSAOをやらなければならず、私は主催者をやらなければならないので人員がいない」で良いか。いや、でもそもそも、仮に俺が南野さんを殺害したフクマデンだとしたら、第二回目のMDで俺がそのまま遠野さんの代わりにKYUMを代行し、第二回目もSAOである南野さんを負かせれば済む事だろ。何故、俺や主催者Xや遠野さんはわざわざ四人三役という手間が掛かる事をしたんだ?」
「それは恐らく、後々の証言で有利になるからだ。つまり、第一回目と第二回目のSAOとKYUMの質問内容の回答から後で矛盾を生じらせる事が可能という事になる。例えば第一回目のMDで出た質問二の「生年月日は?」の際、SAOが「1996年8月12日生まれ」と答え、KYUMが「1986年9月29日生まれ」と答えていた。この正誤はSAOは正、KYUMは誤だった。そして、第二回目のMDで出た質問四の「出身地の都道府県は?」の際、SAOが「東京都」と答え、KYUMが「埼玉県」と答えていた。そして、この質問の正誤はどちらも正だった。果たして、これはどういうメリットがあったのか?それは、則島の死体が発見された後、則島と中学の同級生である南野さんに警察の捜査が入ったら、MDの事を警察に白状し、自分は「MDに参加していない」と言い逃れ出来るからだ。つまり「1996年8月12日生まれ」且つ「東京都出身」の人物がSAOの候補者であり、「1986年9月29日生まれではなく」、且つ「埼玉県出身」の人物がKYUMの候補者という事になる。つまり、東京都出身ではない南野さんはSAOではなく、今年22歳の南野さんが1986年生まれではない事からKYUMでもない事になる。南野さんは、埼玉県出身で生年月日は1996年8月12日生まれだった。よって、南野さんはこの事実を武器にして、言い逃れ出来る事になる。つまり、KYUMとSAOがMDの開催期間中にプレイヤーの入れ替えがなかった事になったら、南野さんはMDに参加していないからフクマデンではないと言う事になるんだ。南野さんはそういった理由で「貴方はIDの入れ替え、つまり、別のIDでMDに参加すると万が一の為の保険になるので、第二回目以降はSAOではなく、KYUMで参加して下さい。SAOは遠野がやります。その為に、遠野は第一回目の質問で生年月日の回答で正にしておきました。」と主催者Xから言われていたんだ。しかし、当然それは方便で、第三回目の時点ではもう君に殺害されているからやる必要がないがな。そして、主催者Xは特に南野さんと俺に四人三役をやらせた理由だがそれはある事が原因でそれがしたかったんだ。いや、このIDの人物入れ替えトリックはそれも兼ねていると言った方が正しいか」
「ある原因?」
「ああ、それは南野さんと俺を両方共MDに参加させる為だ。つまり、俺が南野さんをフクマデンの候補であるという推理に達する環境を作る為だ。主催者Xがいきなり、俺の所にMDの招待状を送ってしまっては俺は一生南野さんに会う機会がない。それだったら、俺は別のIDでMDに参加している事になる南野さんをこの広い世の中から探さなければならない。それは、主催者Xはフェアではないと考えたんだ。だから、まず初めに南野さんと俺を接触させる為に、南野さんのIDだったDAIを南野さんを介して俺に与え、南野さんは別のIDつまり、SAOを使ってMDに参加した。こうする事で俺は南野さんに疑いを持つ事を見越したんだ」
「しかし、警察の捜査に手が回った際に第二回目のMDを南野さんが誰かに代役を頼んで、MDに参加しなかったらどうなるんだ?」
「それは、主催者Xから固く禁止されていたんだ。何故なら、南野さんは殺人者だから、「もうこれ以上、様々な人間を介してボロを出したくない」という方便を主催者Xから南野さんに言えるからな。南野さん自身もそうしたかった筈だ」
「だけど、もし、南野さんがMDで負けたから殺害されて、島内がMDに全く関与していなく、南野さんの代役で殺害されたのであれば、あのカラスのマークが貼ってあったのは島内の死体であって、南野さんの死体にはカラスのマークが貼っていなかったじゃないか。これはMDの規約に違反するのではないのか?」
「いや、実はその状況はMDの規約に違反していないんだ」
「何故だ?」
「確かにMDの規約には「ゲームに敗北し、フクマデンによって殺害されたプレイヤーは殺害された死体だと判る様に現場に目印を示す」と記載してあった。しかし、それは実は主催者X側が今君が言った事を他の参加者達にもそう思わせたいが為、それを規約に課した一番の目的だったんだ」
「どういう事だ?」
「実は南野さんのアパートからMDに敗北したからという理由で殺害されたという証はカラスのマークではなく別のマークが貼ってあったんだ。それは三堂が部屋にあった本棚の裏の隙間から発見してくれた。そして、それは最初に殺害された則島の死体が発見された部屋にも実はあったんだ。その事は、宇崎刑事に確認して証言が取れた」
「一体、何があったんだ?それにもしそれが南野さんのアパートから発見されても、カラスのマークが貼っていないとMDの規約に違反するのではないか?」
「いや、実は違反はしないんだ。南野さんの部屋には例の主催者Xのサイトに貼っていた黒いRの文字で書かれていたマークが発見された。ここで思い出して欲しい。規約では「ゲームに敗北し、フクマデンによって殺害されたプレイヤーは殺害された死体だと判る様に現場に目印を示す」と記載されていた。これはどういう事か?「ゲームに敗北し、フクマデンによって殺害されたプレイヤーは殺害された死体だと判る様に現場に“カラスのマーク”を張る」とは何処にも書いていない。つまり、実際には南野さんはフクマデンに殺害されたと判る様に張られたマークはカラスのマークではなく黒いRの文字で書かれていたマークだったんだ。過去のMDで敗北し、殺害された者と同様のマークを張るとは規約には記載されていない。よって、MDで敗北し、フクマデンに殺害されれば「カラスのマークを張る」と俺達が先入観を持つ為に過去のMDの敗者と則島の死体にカラスのマークを張ったんだ。そして、俺達はまんまと陰の共犯者の思惑に嵌められてしまった。さらに言うと規約でMD参加者ではない殺害された死体に「カラスのマークを貼らない」とは何処にも書いていない。よって、MD参加者ではなく殺害された島内大輝の死体にカラスのマークを貼ってあっても違反ではないという事になる。つまり、カラスのマークが貼ってあった人物がMDで敗北したから殺害されたという根拠にもならない。島内大輝の死体にカラスのマークを貼った目的は今回のMDに参加しているプレイヤーだと印象付ける為だったんだ。そして、君は第二回目のMDが始まる前にSAOとして、「フクマデンに殺害された者は現場にカラスのマークが残されるのですね」と書き込んで、そう印象付けた。しかし、本当はフクマデンによって殺害された者の現場には黒いRのマークを残していたんだ」
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