第十一章 繋がり

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「確かに、言葉のあやではあるが一応、筋は通るな。しかし、何故、MDとは全く関係のない人間がフクマデンによって殺害されたんだ?」 「島内大輝はフクマデンに殺害されたのではない。島内は今回のMDに全く参加していない所か、その存在自体も知らなかった筈だ。そして、当時、フクマデンではなかったつまり、SAOではなく、KYUMだった南野さんによって殺害されたんだ。つまり、島内はMDで敗北して死亡したのではない。何故、主催者Xがそうしたかったというと南野さんはずっとMDに参加していたフクマデンで、MDで敗北した則島と島内を殺害し、その罪を自殺する事によって償いたかった為だったんだ。つまり、南野さんがMDで敗北したという事実を隠蔽する死体の代役として島内は遠野さんによって殺害されたんだ。恐らく、主催者Xにこの条件を飲まされたのだろう。主催者Xが島内の死体を利用したのは南野さんがMDに参加していないと見せかけダミーにする為だ。そして、南野さんは第二回目のMDでKYUMとして、意図せず、結果的に島内を演じる形になった。島内が南野さんの代役に選ばれた理由は南野さんとの共通点が多いからだ。つまり、第二回目のKYUMと同じ情報である出身地が埼玉県、南野さんと同じ年齢、同じ大学、同じ職業等、その死体の代役に選ばれたのが島内大輝いう男なんだ。そうする事で死体が発見されてからその者の情報を調べられても第二回目のMDでの質問の回答の正誤の情報が一致する事になり、その者が第二回目のMDでKYUMをしていた者だと俺達は盲信してしまう。だから、南野さん個人情報と実際に近い者がKYUMの代役の死体に選ばれたんだ。これは俺の推測だが南野さんは個人的には島内に対して殺意はなかったと思う。そして、恐らく、南野さんは主催者Xが島内を殺害したい理由を主催者Xから聞かされていなかったんだ」 「しかし、そもそも何故、陰の共犯者は南野さん、お前、俺、遠野さんで四人三役をやらせたんだ?」 「南野さんは第二、第三回目の時点では君ではなく遠野さんがSAOをやると盲信してしまい、MDに参加してしまった。つまり、君がSAOをやる事で南野さんをMDで敗北させフクマデンとして殺害出来るんだ。フクマデンは全MDを通して、終始一貫SAOであるから、MDの参加者の中に殺意を持っている者がいれば絶対にSAOは敗北してはならない。南野さんにそのままSAO、君がKYUMとして参加してはフクマデンである南野さんを敗北させても、殺害出来ない。つまり、第二回目のMDで南野さんを殺害する為にはSAO以外のプレイヤーをやらせなければならない。それがKYUMだったんだ。第二回目のMDでKYUMをやらせ、SAOによって敗北させる為、主催者Xは四人三役にしたかったんだ。そして、KYUMを南野さんにやらせる事で、俺達に大学、生年月日、性別が同じという比較的、人物像が似ている島内が第二回目のMDでKYUMをやっていたと思い込ませる事が出来るんだ。そして無論、南野さん、則島以外の者がMDで仮に敗れていたら、俺も含めその時、MDに参加していたフクマデンに殺害されていただろう。つまり、俺はお前に殺害されていたかもしれないという事だ」 「ふんっ」 「そして、南野さんと島内の生年月日を同じだったのは主催者Xが意図的に選んだからだ。南野さんは主催者Xに第二回目のKYUMを島内がやっている事にし、もし、第二回目のMDでKYUMが負けてしまった場合、自分が殺害される代わりに自分と遠野さんが協力して島内を殺害すると主催者Xに言われていたんだ。しかし、それは主催者Xの嘘で、島内と南野さんは殺害されてしまった。さっきも言った通り、南野さんは第二回目のMDでSAOを交代して、フクマデン候補を外れたかったんだ。今考えれば、南野さんの第二回のMDで敗北後の雑談でのあの余裕はこの保険があったからだ」 ジャッジの針は御神君の方に傾いていた。 ふと、御神君が手に持っているタブレットPCを見てみた。 ANEX    おーい。推理の続きは? JIM     DAI、一体何時まで待たせるつもりだ? MUE     今、DAI以外で書き込みしていないプレイヤーがフクマデンじゃないの?だって、もう直接対決しているかもしれないからね。 LEO     じゃぁ、SAOがフクマデンという事かしら? JIM     まぁ、そうなるな。 外野がうるさい。 今、書き込みなどしている余裕なんかない。 「しかし、そもそも何故、俺はMDに参加してから、南野さんを殺害しなければならないという回りくどいやり方をしなくてはならないのだ?」 「それは、MDの参加者の中に殺人者フクマデンがいる事が絶対条件だからだ。もし、俺が君のMDの参加を証明しなければ、君はフクマデンの候補にもならない事になる。勿論、南野さんとしても同じ事だ。則島殺害の容疑者がMDの参加者のみという事なら、自分は容疑者から外れる事となる。つまり、君と南野さんはフクマデンに該当しないという事になり、これはアリバイ以上に有力な防御策となる。自分がMDの参加者ではないと証明された時点で、フクマデンの容疑者から外れる事になるんだ。その為に君と南野さんはIDの入れ替わりという手で、質問に対する回答の正誤から矛盾を生じさせ、MDの参加者ではない事を証明しようとし、フクマデンの容疑者から外れるつもりだったんだ。そもそもMD自体が何故、質問を参加者に事前に答えさせ、ゲーム中回答の答え合わせといった形式のゲームにしたというと、君と南野さんがフクマデンではないと証明する為の手法として考えられたゲームだったと言えるんだ。つまり、第三者である遠野さんを介して、俺を含めて四人三役をする事で第一回目のMDには参加していない人物を作る、つまり、君のアリバイを手に入れようとしたんだ。後々、質問内容の正誤に誤りを生じさせる事で、ずっとMDに参加していないという事になるからな。質問の回答が第一回、第二回、第三回目のSAOと個人情報が一致する者なんて大勢といる。つまり、MDの参加者の候補者が君に向けられるのではなく、その大勢の人達に向けられる様にしたかったんだ」 「なるほど、その理由なら納得だわ」 彼にはまだ余裕があるのか? 「そして、改めて言うが、主催者Xは何故そんな犯人のヒントを与えるという事をしたというと、俺に対して以前から興味があり、俺に殺人事件という挑戦状を叩き付けている行為を前回のツインホテルの殺害事件と今回のMDの殺害事件と称してしているからだ。何故そう言えるのかというと、二つの事件はどちらも俺に関わりがある人物が事件に巻き込まれた事から、俺に殺人事件の探偵役をやらせたいという根拠となる。前回の事件は偶偶、依頼者が山鍋社長でその娘の佳純が俺と知り合いだった。そして、今回の事件の解明の場として主催者Xは君の自宅ではなくこのパソコン室を選び、君は契約の内容通り、SAOをしていたんだ。日本全国民の中から南野さんと則島を殺害した者を現場に残った手掛かりを元にし、探し出す事なんてほぼ不可能に近い。それだったら、俺に対し勝負している意味がない。よって犯人は俺の身近な人間か俺と一度でも会った事がある人物という事となる。そして、主催者X改め陰の共犯者は恐らく俺のある過去を知っている人間だ。そして、今、俺を試している。君と南野さんは俺をMDに参加させる事の条件を始め、その他様々な条件を飲む事を条件として法外な報酬の支払いを免除されたのではないのか?日本全国民の中からMDの参加者をまずは絞り込み、その中で南野さんと則島を殺害した犯人を探し当てる事の方が論理立てて出来るし、何よりもフェアだ。そうする事で俺にフクマデンの正体を論理的に当てるチャンスが生まれるという事なる。つまり、フクマデンの正体は俺と前々から面識があるか、今回のMDが始める直前や最中に面識を意図的に作り、MDの参加者だと判る範囲の人物で、且つ個別に殺意があった者、或いは南野さんと則島にそれぞれ別に殺意があった者までに絞り込められるという事だ」 御神君の熱弁によって、半藤君の表情が曇った。 「なるほどね。・・・・・もしそれが本当なら、一つの行為に幾つもの意味を持つ凄い手だな。それを考えた主催者Xは頭良いな」 「ああ、そうだな。ツインホテルでの事件もかなり、複雑な事件だったしな。主催者Xは複数の依頼者の要求を満たし、建前上一つの事件に合理的に統一し、俺達にその真意を気づかせない、この道のプロだな」 「でも今はそんな事より、容疑の疑いが掛かっている俺をお前の推理の綻びによって、俺を安心させる為に早く推理を続けてくれ」 「ああ、そうするよ。しかし、君は俺の推理を全て聞き終わると、俺の推理を認める事になるがな」 「猪口才な」
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