十三 壊れる均衡

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 でも、もし断られたら?  決定的に拒絶されたら?  せっかく自然に同じ空間に居られるようになったのに、また悠真の姿が見られなくなったら?  そう考えると怖い。今度こそ自分が壊れてしまいそうで。  指が震えて、返事を入力できないまま、数分が経った。  諦めかけてスマホをホーム画面に戻し、何気なく通知欄を下げてみたら、さっきの颯のLINEが目に入った。  どうやら続きがあったらしい。私は何の感情もなくその通知をタップした。  LINEの画面が再び開き、メッセージが表示される。 “わかった。また後で連絡するけど、あいつの態度に晴が傷つく必要ないからな” “俺はずっと晴の味方だから。何があっても絶対に晴を一人にしないから” 「颯……」  悠真と正反対の優しい言葉に、みるみる涙がこみ上げてきて、ぼろぼろと零れていった。  体に熱が戻る。感情が暖かな色を取り戻す。  なんでだろう。悠真を好きなのに、颯を手放したくない。 「もう、わかんないよ……」  私はベッドに縮こまって、声を出して泣いた。  今さらどちらかを選ぶことなんてできない。  悠真も颯も、失いたくない大事な人。  でも都合よく二人を手に入れられないのが恋愛だというのなら、いったいここからどうやって進めばいいんだろう。  誰か答えを教えてほしい。  
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