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十四 大事にしたいから
通信制高校でよかった、と思うのはこういう時だ。
登校するもしないも自由。授業を受けるも受けないも自由。
学校を休むのにもっともらしい理由はいらないし、勘ぐられることもない。サボり扱いされることもない。
そして、自宅にいながらオンラインで授業を聞くことができる。
それだって、カメラオンを推奨されてはいるけど、オフのままこっそり受けても許される。
勉強するハードルを低くして、個人のペースに委ねてくれるから、些細なことで登校できなくなってしまう人間にも優しい。
私は再び学校へ行く気力を失い、自分の部屋からオンライン授業にアクセスした。
タブレットの画面にオンライン授業を受けている生徒の一覧を表示すると、悠真の姿が見つかった。
自分のカメラはオフにしたままで、授業なんか聞かずにその姿に見入る。
もっと早くこうしていればよかった。こうやってずっと顔を見ていられたなら、悠真への気持ちをごまかすことなんて、きっとできなかったのに。
ここに私が顔を出したら、悠真も私に気づくだろうか。
もし悠真が、普段から私がこっちに来ることを期待して気に掛けていたなら、きっとこの一覧をのぞくだろう。
私を見つけたら、悠真も授業そっちのけで私を見つめてくれる?
私が同じように見つめているのに気づいたら、二人の心は通じる?
そんな妄想に淡い期待を持ちながらも、カメラのボタンを押す勇気は出なかった。
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