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寒さが和らぎ始めた三月中旬。
「ようし、これで完璧なはず。見てて」
トラック状の黒いラインが描かれている大きな紙を床に敷き、障害物とロボットを置いて、PCの実行ボタンを押した。
うねうねと、ロボットが動き始める。私は心の中で「がんばれ」と励ましながらそれを見つめた。
進路に障害物があったら、それを黒いラインの外まで押し出す。その後、今度はラインの外側に回り込んで障害物を内側に戻す。
その複雑な指示を、私のロボットは見事にやってのけた。
「やった……!」
「おおー! すげぇじゃん、晴!」
「見た? ちゃんと見た?」
「見た見た! ついに全部一人でできたな。努力が実ったな!」
「うん! ありがとう!」
ハイタッチして祝ってくれる颯の向こうに、我関せずでPCに向かったままの悠真がいる。
あの頃、なかなかうまくいかなかったプログラミング。
諦めそうな私に悠真は、「失敗したら直す、それを繰り返せば、いつかは思い通りに動くようになる」とアドバイスをくれた。
あれから半年かかったけど、私はついに難しいプログラムを自力で成功させられるまでになった。
これって話しかけるチャンスなんじゃないだろうか。
そう思った途端、胸がドクンと大きく鳴った。
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