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私は勇気を出して悠真の元へと歩み寄った。
近づく気配に気づいたのか、悠真はチラッとこちらを見上げた。
目が合って、一気に緊張が増して鼓動が早くなるのを飲み込みながら、
「ちゃんと思うように動いたよ。悠真の言うとおりだったね!」
明るく言ったつもりが、少し声が上擦った。
しばしの沈黙が流れる。
気まずくて、作った笑顔がひきつっていく。
「……フーン」
返ってきたのは、喜びも、ねぎらいも、何もない、小さな声の、冷たい返事。
それすら終わらないうちに、悠真の関心はPC画面に戻る。
その心ない対応にギリギリと胸が痛んで、握りしめた勇気も張り付けた笑顔も、存在理由さえもがみるみるしぼんでいった。
ああ、失敗した。
こんなにも胸をえぐる一瞬を得るために、私は動いてしまった。
どう繕おうとしても、悠真の心はもう戻らないというのに。
「おい、悠真。ちょっとくらい何か言えよ。そもそもお前が晴をプログラミングに誘ったんだろ?」
颯が間に割って入る。沈黙を守る悠真。
「いいの、颯」
私は颯の腕に触れて止めた。
「晴……」
「はぁ、私疲れちゃった。なんか飲み物買ってくるね」
私は笑顔を見せながら言って、スマホを持って急いで教室を出た。
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