十三 壊れる均衡

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 私は勇気を出して悠真の元へと歩み寄った。  近づく気配に気づいたのか、悠真はチラッとこちらを見上げた。  目が合って、一気に緊張が増して鼓動が早くなるのを飲み込みながら、 「ちゃんと思うように動いたよ。悠真の言うとおりだったね!」  明るく言ったつもりが、少し声が上擦った。  しばしの沈黙が流れる。  気まずくて、作った笑顔がひきつっていく。 「……フーン」  返ってきたのは、喜びも、ねぎらいも、何もない、小さな声の、冷たい返事。  それすら終わらないうちに、悠真の関心はPC画面に戻る。  その心ない対応にギリギリと胸が痛んで、握りしめた勇気も張り付けた笑顔も、存在理由さえもがみるみるしぼんでいった。  ああ、失敗した。  こんなにも胸をえぐる一瞬を得るために、私は動いてしまった。  どう繕おうとしても、悠真の心はもう戻らないというのに。 「おい、悠真。ちょっとくらい何か言えよ。そもそもお前が晴をプログラミングに誘ったんだろ?」  颯が間に割って入る。沈黙を守る悠真。 「いいの、颯」  私は颯の腕に触れて止めた。 「晴……」 「はぁ、私疲れちゃった。なんか飲み物買ってくるね」  私は笑顔を見せながら言って、スマホを持って急いで教室を出た。  
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