十三 壊れる均衡

4/11
前へ
/123ページ
次へ
 廊下をしばらく進んでから、電子マネーのチャージを切らしていたことにはたと気づく。  しまったな……と思いながらポケットを探ってみたけど、入れもしない小銭があるわけもなく。  仕方ない、ちょっと気まずいけどお財布を取りに戻ろう。そう思って、私はプログラミング室へと足を戻した。  扉に手をかけようとした、その時だった。 「……らつき合ってんの?」  中から聞こえてきた言葉にドキリとして、私は思わず手を止めた。  悠真の声だ。 「は? なんで?」 「いや、なんか前より距離近ぇし」  私はドアの小窓から姿が見えないように、壁に体を寄せてじっと聞き耳を立てた。 「自分から晴のこと捨てておいて、今さら気になるのかよ。勝手なヤツ」 「は? 捨てたのは晴だろ」  ――え?  私は耳を疑った。 「晴が捨てた?」 「確かに喧嘩はしたし、俺から別れるって言ったけど、あっさり離れていったのはアイツの方だ。俺が学校来なくなっても連絡もないし、やっと来たかと思ったらもう心変わりしてた。どうせまた新しい男でも捕まえたんだなと思ってたけど……。まさかお前だったなんて、マジで最悪だろ」  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加