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廊下をしばらく進んでから、電子マネーのチャージを切らしていたことにはたと気づく。
しまったな……と思いながらポケットを探ってみたけど、入れもしない小銭があるわけもなく。
仕方ない、ちょっと気まずいけどお財布を取りに戻ろう。そう思って、私はプログラミング室へと足を戻した。
扉に手をかけようとした、その時だった。
「……らつき合ってんの?」
中から聞こえてきた言葉にドキリとして、私は思わず手を止めた。
悠真の声だ。
「は? なんで?」
「いや、なんか前より距離近ぇし」
私はドアの小窓から姿が見えないように、壁に体を寄せてじっと聞き耳を立てた。
「自分から晴のこと捨てておいて、今さら気になるのかよ。勝手なヤツ」
「は? 捨てたのは晴だろ」
――え?
私は耳を疑った。
「晴が捨てた?」
「確かに喧嘩はしたし、俺から別れるって言ったけど、あっさり離れていったのはアイツの方だ。俺が学校来なくなっても連絡もないし、やっと来たかと思ったらもう心変わりしてた。どうせまた新しい男でも捕まえたんだなと思ってたけど……。まさかお前だったなんて、マジで最悪だろ」
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