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そんな――。
私は思わず両手で口を覆った。背中が壁をずるずると擦り落ちて、ペタンと廊下に座り込む。
頭が混乱する。悠真は私と、別れたつもりじゃなかったの?
じゃあ、私が今までやってきたことは?
自分の本当の気持ちを押し込めて、颯との間に生きる術を探ろうと模索してきたのはなんのためだったの?
「……んだよそれ……。じゃあまだ気持ちがあるってことだよな? だったら晴にそう言ってやれよ! あいつはきっとまだ、お前のこと……」
「そんなのあり得ねーわ。今さらだろ」
ああ――。
悠真は私と別れたことを後悔していた。
今さら戻りたいなんて言えずに苦しんでいた。
私のことをずっと好きでいてくれたんだ。
胸の奥深くに沈めていた悠真への想いが、怒涛のように溢れ出す。
悠真が好き。
悠真の元へ戻りたい。
悠真、悠真――。
もう諦めていた。気持ちに整理もついたつもりでいた。
なのに可能性が見えた途端、どうしてこんなにも強い思いが沸き上がってくるんだろう。
あの愛情にもう一度包んでもらえるかもしれない。お互いを求め合ったかけがえのない時間が戻ってくるかもしれない。
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