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「晴、どうした? 大丈夫か?」
メッセージを見た颯が、私の荷物を持って駆け寄ってくる。
「ほら、これお前のカバン」
「ありがとう」
私は颯に“お腹が痛くなって動けない。カバンに薬が入ってるから、カバンごと全部持ってきて”とメッセージを送った。そして、自販機の側にうずくまって、颯が来るのを待っていた。
通学カバンを受け取ると、私はゆっくりと立ち上がった。
「ごめんね、颯。ほんとは平気なんだ。でも今日はもう、悠真の顔見たくなくて……。私、このまま帰るね」
「晴……」
重ねた嘘に阻まれ、颯の顔を見られなかった。
私の心はもう颯を裏切ってしまったのだ。
顔を背けて俯いたまま、
「ごめん」
そう言い残して私は駆け出した。
「晴っ」
呼ぶ声が私を引き戻そうとする。でも、止まれるわけがない。
そのまま校門を出て、颯が追いかけて来なかったことにホッとしながら、私はまっすぐ家に帰った。
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