十三 壊れる均衡

8/11
前へ
/123ページ
次へ
 帰り着いてからスマホを見ると、颯から着信とメッセージが入っていた。 “今どこにいるの?” “俺も学校出た。今から行くから連絡して”  既読無視しようか悩みながら自分の部屋に入り、ベッドに寝転がった。  今私が会いたいのは颯じゃない。LINEをしたいのも、声を聞きたいのも颯じゃない。  それが酷いことだってわかってる。颯を嫌いになったんじゃない。でも、もっと心を惹きつける人が、私をがんじがらめに捕らえて離さない人が目の前に蘇ってしまった。その瞬間から、もう心は一方向にしか動かない。  恋はなぜこんなにも理不尽で不都合なのだろう。  想いのエネルギーが強すぎて、暴走するばかりでコントロールが利かない。  そっちに行きたくないのに、そっちにしか行きたくない。  颯を傷つけたくないのに、引き返すことができない。  だって、何をかなぐり捨てたって、その先に悠真がいるのなら他に必要なものなんて何一つないでしょう?  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加