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「それは、という事は、その前の事は本当ということですか?」
「い、いや、確かに本当っちゃ本当だけど、そういう意味ではなくて……あれはちょっと精神的にやられてたから出た行動であって、明るい所だったら絶対にしない事で……」
「仰ってる意味は分かりませんが……とりあえず、おめでとうございます」
「だから、違うって!」
「おう、ありがとな」
必死に言葉を探したというのに、快陸の誤解は解けなかったらしい。
快陸の言葉を來海は当然の如く受け入れ、そんな彼にジト目を送る。
その視線から逃れるためか彼は「中、入ろうぜ」と言ってきて、これ以上言うと逆に嘘くさくなると思い、大きなため息を吐いた俺は大人しく鍵を差した。
「お邪魔します」
「ます」
玄関でそれぞれ靴を揃えると、俺を先頭に中に入る。
「そういえば、外で待ってたんだな……気、遣ってくれたのか?」
「当然です、寝てるのをわざわざ起こしたくはないですから」
一人先に行っていた快陸は、寝ているかもしれない月翔を思い、遅れてくる俺と來海を待っていたようだ。
ふらつく足取りを見せたくなくて、夜盲症がバレたくなくて先に帰るように言ったのだが、月翔を起こす可能性まで視野に入れられていなかった俺とは違い、月翔を思ってくれていた事に何だか嬉しくなった。
ちょっと変態じみた執着は感じるが、快陸は本当に月翔の事を想っているようだ。
來海だけ俺に付いてきたのは、俺の昼の様子に思う所があったからか。
とにかく、この兄弟は見た目に反して優しい性格をしているらしい。
「俺、月翔の様子を見てくるから。ここで待っててくれ」
「分かりました」
何も面白い物などないというのに物珍しそうに辺りを見渡している來海とは違い、礼儀正しく快陸が返事をする。
そんな二人を置いて俺は、二階にある月翔の部屋に向かった。
階段を上がった先にあるのは、右が俺で、左が月翔の部屋だ。
それぞれの部屋の前にはプレートが掲げてあって、『つきと』と書かれたそこには可愛らしい四葉のクローバーが描かれている。
「月翔、起きてるか?」
「……陽人、帰ったの?」
丁度起きていたらしく、すぐに返事は帰ってきたがその声はまだ本調子ではなさそうだ。
「今光葉兄弟が来てるんだが、入れて良さそうか?」
「ハ!?」
部屋に入りながら言った台詞に、ベッドにて横たわっていた体が跳ね起きる。
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