【2】始まり

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〜江東区都立総合医療センター〜 玄関前に車を停めた土屋。 警備員が注意する声など無視して中へ入る。 そのタイミングで、眠っている戸澤からナースコールのランプが点いた。 「戸澤さん、どうしましたか?」 インターホンで呼びかける、担当の(みなと)。 返事はない。 「ちょっと見てきます。ついでに包帯も替える時間だから」 「戸澤さんね。よく持ち直したわよね、さすが刑事さん。一人で大丈夫?」 「はい。大丈夫です」 準備しておいた一通りのキットを持って出る。 病室に入ると、側にマスクをした女性がいた。 「警察の者です。ごめんなさい誤って押してしまって…」 「大丈夫ですよ、ご心配ですよね。でももう安心していいですから」 「それは良かった。起きたらこれを」 小さな紙袋を受け取る湊。 携帯が鳴った様で、出て行く女性。 受け取り脇机に置くと袋の口が開き、ふと中を覗いた。 立ち去る女性と、駆けてくる土屋がすれ違う。 (フッ…) その笑みに気付くはずはない。 「ガシャーン!」 病室から聞こえた床に落ちる金属音。 ドアを開ける土屋。 「あなた⁉️」 戸澤が動かせる片手で、首を狙ったナースのハサミを食い止めていた。 走り寄る土屋を、湊が蹴り飛ばす。 まともにくらい、床に転がる土屋。 「香織❗️」 叫ぶ戸澤に、もう一度ハサミを振りかざす湊。 「パンッ❗️」「ウッ!」 胸を撃たれた湊が崩れ落ちた。 初めて人を撃った土屋が固まっている。 拳銃の発砲音に、他のナース達が駆けつけ、血だらけで倒れている湊を見た。 「湊さん⁉️担架と鈴木先生を❗️」 主任が叫ぶ。 2人が担架を取りに走り、1人が電話を掛ける。 主任看護師が、湊の容体を診る。 横から肺を撃たれ、重傷であった。 「もしもし鈴木先生、208号室で湊さんが撃たれました。直ぐに来てください」 「土屋!大丈夫か⁉️」 動けない戸澤の声は、ショックに呆然とした今の土屋には…届かなかった。
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