【3】Killer Fairy

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敷地は広いが手入れは悪く、家も大きくない。 しかし、ガレージには新品のポルシェが停めてあった。 (趣味に金をかける奴か?もしくは…大金を手にしたか。わかり易い奴だ) 離れた場所に車を停め、見つからない様に、素早く忍び寄る。 特殊なサングラスのサーモセンサーモードで、佐橋の居場所は分かった。 外見は黒でも、見る側からは普通に見える。 (TERRAってのは、CIAより凄いわね…) 佐橋は地下室にいた。 あらかじめ作成しておいた葛城の音声で、佐橋に電話をかけ、外へ呼び出す。 ポルシェが出たのを確認し、監視カメラの死角から屋敷に侵入した。 彼女にとってみれば、一般人の屋敷など、造作もないことである。 難なく地下室への入り口を見つけた。 鍵を開けて下りて行く。 「何なのこれは?」 サングラスの超小型カメラで、映像はTERRAのマザーシステム AI(アイ)に送られている。 「桐谷様、右奥のガラスケースの幕を外して下さい」 耳の通信機から、アイの声がした。 大きなガラスケースに被せてある、黒い幕をめくって見た。 「これって…フェアリーバタフライ。こんなに沢山」 「桐谷、今そこのPCに潜り込んだ。やはり闇ネットで売り捌いてるのは奴だな。顧客リストと販売ルートの情報を頂くぜ」 TERRAにいるメカニックで、ラブの片腕T2(ティーツー)がハッキングしていた。 「T2、蝶に関するレポートやデータがあればお願い」 「了解!偉く重装備のガスマスクがあるな」 ケースの横の台に置いてあった。 「奴はウィルスでも仕込んでるのか?」 「それらしいものはないわ。一通り録画したら出るわ。可愛い妖精も、これだけいるとさすがに気持ち悪い」 中に別の部屋があった。 「おっと待て。そこは開けない方が良さそうだぜ。扉の密閉構造が半端ねぇ」 見ると確かにT2の言う通りである。 「ん?…桐谷、サーモセンサーで見てみろ」 「内部の温度が…低い」 「まるで冷蔵庫だな。幾つか転がってる塊は、恐らく動物の死骸だろう。人じゃあない」 「そんな物を冷蔵保存する理由って…」 会話を聞き、映像を見ていた月島風花が会話に加わる。 「食用として保存するか…何かの発育を遅らせるため。床に放置されてるから、前者はない。アイさん、映像を拡大して下さい」 サーモセンサー画像が拡大されて行くに連れ、死骸の表面に極小さな点が見えてきた。 「やっぱり。あの無数の点は、恐らく蝶の卵か幼虫ね。佐橋さんは、そこであの蝶を孵化させ、育てていると思われます」 「さすが天才。で?どうすればいい?」 「そこを爆破して、燃やして下さい」 「マジか⁉️」(T2) 「桐谷さんなら、楽勝ですよね?まだ原因は分からないけど、全ての現場にあの蝶の死骸が見つかってます。これ以上被害を増やさない為にも、お願いします!」 「えっと…爆薬なら持ってるけど💦」 「持ってんのか💦」 「まずは彼を捕まえて、止める方が…」 さすがに、いきなりの爆破は躊躇(ためら)われた。 天才で、TERRAの開発部門とは言え大学生💧 「警察とラブの力で、これ以上の発売は止める様に動きます。彼が法を犯している訳ではなく、原因かも不明確なので…ね💦」 不法侵入で、法を犯してるのは桐谷である💧 「分かりました。学生風情が偉そうなことを言ってすみませんでした」 IQ230は、お見通しである。 とりあえず元通りにして、退散する。 販売サイトについては、外部からのアクセスをブロックする罠を、T2が仕込んだ。 これまた違法ではあるが…
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