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葛城夫妻が一度目を合わす。
「第６の感覚…と呼ばれる類いです」
なんだ…ばかばかしい。
そんな雰囲気が見られた。
「最初に疑問を持ったのは、花山警視総監がTERRAにお孫さんを連れて来た時です」
「んん？」
花山が首を傾げる。
「ずっと私に懐いていた蝶が、お孫さんを見た瞬間に、そちらへ移りました」
「おぉ、そうであったな。あれからずっと孫から離れなかったよ。…あの日まではな」
飛鳥神の感謝状授与式騒動である。
この内容を聞いていたアイの擬似体が、モニターに現れた。
「失礼します、TERRAのアイです。今の葛城博士様の発言について、関連すると思われる結果を得ましたので、報告したいと思いますが…」
「アイ、気にしなくていいから、よろしく」
ラブが許可を出す。
「蝶の死骸が見つかった現場で共通するのは、被害者或いは加害者が蝶に対して抱いた、敵意や殺意です。葛城様から花山様のお孫様へ乗り換えたのは、より好意を感じたものと考えられます」
「バカな！触角さえない下等生物が、人の心を読むなどありえない。そうだろう皆さん？」
NASAのエヴァン長官が同意を促す。
しかし…意外にも反応は鈍かった。
「そう言えば、うちのラボでも沢山の蝶が発生したが、新種の可能性が高いと考え、別の部屋へ移した。驚きはしたが、敵意はなかったな。それに…私にはあまり懐かなかったが、蝶を気に入ったセリーヌには、物凄く集まっていたな」
CDCのジョン博士が、セリーヌ博士を見た。
「確かに、ラボの中でも懐く人と懐かない人がはっきり分かれていて、それなりに分かる気もしました」
「アイ、Ｔ２ありがとう。日本の例でも、虫が苦手な男性が正気を失ったり、調理場や病棟に現れた蝶を、駆除しようとした者が異常な行動を起こしています。ネットで売り捌いていた者は判明し、蝶は全てTERRAが捕獲しましたので、検証してみます」
「とりあえず世界中に警告し、回収することを考えます」
WHOのエマ博士が、その任を自ら引き受けた。
「話を少し戻します。モアイ像が乗るアフの下には、確かに人が葬られていました。しかしあの７体は他とは違い、葬ったのではなく、あの蝶を封じ込めていたもの。島にいたロシアの博士２人は、ヴェロニカが紐解いた謎を確かめる為、パンドラの箱を開けてしまったのです」
「しかし、さすが世界最高頭脳と自称するだけのことはある。イースター島の謎を解明していたとは…」
スミス大統領の言葉に、うなずく面々。
「おい、あんた達はバカか。感心するのは間違いだってことに気付いてねぇのか？」
蝶に侵された青年に、妻を殺された豊川。
重たい声が、世界に響く。
「何だね君は、バカとは失礼な❗️」
「NASAもアンタみたいな奴がトップじゃ、おめでたいものね。私は彼女に会ってもいないけど、そのヴェロニカって女しか知らなかったのよ、あの死蝶の存在を。知ってて解き放ったってこと、分かってんの⁉️」
桐谷の怒りが爆発した💢。
それを手で制するラブ。
「皆さん、つまりはそういうことです」
ラブの肯定が意味するもの。
その哀しげな表情に、戸惑う皆んな。
「彼女はあの時…」
噛み締めた唇から血が伝う。
「地球の危機に命懸けで立ち向かっている者達がいる一方で、その機に乗じて強奪や暴動を起こす者、世紀末を祭りの様にはしゃぐ者、我関せずと目も向けない者がたくさんいた」
震える拳に爪が突き刺さる。
「そんな人類に守る価値は無い。皆が命の危機を感じるべきと…見切りをつけた」
ラブが数枚の写真を映し出した。
「これはロシアに潜伏中のティークから送られてきたものです」
モスクワのアララト・ハイアットホテル。
「元ロシア北海艦隊指揮官のサルコフ大佐、同じくミネルヴァ少尉、元ロシア軍本部戦略部隊のザイール隊長、ロシアの殺し屋ツヴェンサー、そして…彼等に将軍と呼ばれていたのが、ヴェロニカ」
「何っ⁉️」
「イースター島のロシア人のラボを調査した新咲凛は、ロシアの殺し屋達に狙われ、その彼等には、あのHEAVENのタトゥーがありました。全て彼女が仕組んだ罠。名はまだ分かりませんが、新たな脅威となった組織の主導者は、ツヴェルト・ラルフ・ヴェロニカ❗️彼女です」
その脅威の計り知れない能力。
TERRAや世界中の機密機関、その手の内を知り尽くしている存在に、衝撃が走る。
「そんな…彼女は味方ではなかったのか？」
「確かに味方でした。人類に失望するまでは。今は、最強最大の敵です❗️」
「しかし今回の謎も彼女のおかげで…」
「間違ってはいけません。今回の事件を起こしたのはヴェロニカ。あのまま放っておけば、被害は拡大したはず。しかし彼女は、我々では知り得ない真相へのヒントを机上に敢えて残し、その力を見せつけた❗️」
深い哀しみと、燃え上がった強い怒り🔥。
ラブの言葉が、皆に響き渡った。
「これはヴェロニカからの、戦線布告です❗️」
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