【3】Killer Fairy

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騒然とする各場所の会議会場。 まさかの強敵を、(にわか)には受け入れられずに戸惑う。 それはラブを始め、TERRA及び警視庁、総理大臣においても同じ…いや、繋がりが深かった分だけ、ショックは大きい。 それを見越してか、アイがシステムへの侵入を告げた。 「ラブ様、ヴェロニカ様が侵入しました」 一瞬、全員の息が止まった。 「いいわ、繋いで」 モニターに、優雅に着飾った彼女が映る。 屋敷の中からのコンタクトであった。 「ラブ、そして皆さん。そろそろ私に気付かれた頃かと思い、少しご挨拶でもと、お邪魔させてもらいました。ラブ、まだ私のIDパスを消してないとは、やはりあなたは甘い」 「ヴェロニカ❗️あんたよくも裏切って、大勢の人を殺したわね❗️」 「凛…いや、最強と言われた暗殺者、(ハク)博凛(フーリン)。殺し屋のあなたに言われたくはないわ。皆さんはラブに騙されているのよ?ソイツは前警視総監をも殺した殺人者」 「何だと⁉️」 気付いていた者もいたが、知らない者が多い。 「まぁ…そんなことはどうでも良い。私が裏切った?実に愚かな考えね。お前も分かっているだろう。ラブや私の信じたものを裏切ったのは、世界の大半を占める人類だということを。奴らは、どこかで、今この瞬間に、醜い争いやバカな主導者のせいで苦しみ、飢餓や病気で死んでいる数万の者のことなど気にもしていない。極一部のマスコミが取り上げたものへのみ、一時的な感心を持ち、僅かな寄付などで優越感に満足している」 否定はできない事実である。 しかし、ラブは真っ向から否定した。 「それは違う!あなたは分かってくれていると信じていた。いえ…きっと分かっている。確かに、大半の人々はあなたの言う通り。しかしそれは関わりが無いから当たり前のこと。世界中に、その日生き延びることに必死な命がたくさんあり、愚かな大人達のせいで、無力な子供達が毎日死んでいる。そんなことぐらい、みんな分かってる。それを笑い飛ばして楽しむ者などいない!貧富の差はあれど、みんなそれぞれに自分の命を生きているだけ。無視しているのと、関わりが無いのとは、全っ然違う❗️」 主張の事実は認めるが、その背景にあるもの、人の心については、絶対に認めないラブ。 「そのあなたの愛情に、あなたに関わった世界は心を開く。この私もその1人で、それは変わってはいない。でも…そんなに命を懸けて守ろうとしているのに、果たして世界は変わった?その大半の人々は何も変わってないじゃない❗️変わる気さえしない。世界が滅びるかもしれない時に、普通の生活してる場合じゃないでしょ❗️そんな自分達のために、必死で戦っている者達がいることすら分かろうとしない。コイツらは何様なのよ?」 ここにいるメンバーは、その戦いの場に身を投じている者であり、彼女の想いは痛いほど胸に響く。 「ヴェロニカ。私は誰かのためにとか、何かのためにとか、そんな思い上がった気持ちで生きてはいない。恐らくここにいる皆んなもそのはずです。今、自分達が戦う必要があり、その能力と機会があるから、それが使命だと考えて生きてる。誰でもその場に直面したら、その判断で、逃げるか立ち向かうかを決めるはず。そんな使命感との葛藤に直面する人なんて、私は1人でも少なくあって欲しいと願います。知らなくていい人が、普通に生きていればいい人が、1人でも多いことを願います。だから、あなたの考えは、絶対に認めない❗️」 ラブの本心。 思わず皆んなの胸に、熱いものが込み上げる。 「やはり…話しても無駄ね。私は、危機感のない奴らに、命のやり取りに身を置かれる気持ちを、知らしめてやりたい。好き勝手に批判してほざく奴らに、その場に立って恐怖とそれに勝る勇気を解らせてやる。だからラブ、あなたの甘い考えは、死んでも認めない❗️」 信じ合っている2人が、正面からぶつかり合う皮肉で矛盾した空間。 誰も口を挟めはしなかった。 「パラ・ヌイの秘密を教えたのは、決して私の力を知らしめるためではない。私を助け、今まで愛して信じてくれたラブへの、せめてもの感謝がそうさせた。パンドラの箱を開いて置きながら、信じて貰えるとは思っていないが…それだけは真実。それが今の私なりのあなたへの愛だ。さよなら。ラブ」 「接続が解除されました。TERRAへのパスコードも自ら破壊した様です」 静まり返った会議室に、アイが伝えた。 ヴェロニカとの、完全な決別の証を…。
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