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〜TERRA〜
開発ラボでは、あの佐橋友之も参画して、検証実験が繰り返されていた。
まずは、ロボットによる駆除を試し、次に蝶を捕食するカメレオンや、カマキリで試したが、いずれも有害な物質は得られなかった。
「やはり、人間並の繊細な脳波じゃないと、ヤツらは感じ取ることができない様だな」
罪滅ぼしのために、佐橋は寝る間も惜しんで研究に没頭していた。
「案外、いい人なのね」
天才の月島風花と2人で、様々な検証を行っている佐橋を見ながら、桐谷が葛城に呟く。
「案外…な。詰まるところは、新種の蝶の研究結果を論文にし、発表する腹積りではあるが、悪い奴ではない」
話してる内に、月島と佐橋の口論がヒートアップしていた。
「あらあら、仲良くやってると思ってたのに」
いつの間にか、ラブがいた。
「さすがねラブ、気配を感じなかったわ。裁判はどうだった?」
ラブは宮本淳一の裁判に、重要参考人として参席し、蝶の真実を多くの事例で説明した。
「納得はしてもらったけど、確証がないため、1週間の猶予を貰ったわ。何としてもあの蝶の仕業であることを、立証しないと!」
「淳一さん、土屋さん、咲さん、どうでもいいけどヤクザ屋さん💧、皆んな有罪と判定されるってわけね」
「それだけじゃない!世界中の犯罪を犯した人達も、有罪になってしまいますね」
そこへ月島が出てきた。
「ラブさん!佐橋さんを止めて下さい。自分が実験台になって、立証しようとしてるんです❗️」
「やはり人の脳波じゃないと無理ってことね」
細菌用の防護服を着て、準備を始めた佐橋。
慌ててラブが止めに入る。
「佐橋博士、あの鱗粉の大きさは分子レベル。細菌用の防護服では防げないわ」
「分かってる。しかしこれしかもう方法が無いんだ。周りから危険な物をなくし、片手以外を拘束すれば、脳を一時的にやられても、何とかなるだろう」
それはラブも考えていた。
しかし、いくつかの症例から、それでも身の安全は保証できないと分かった。
「発狂して自殺した者には、壁に頭をぶつけたり、舌を噛み切ったり。あらゆる方法が見られます。だから許可はできません!」
「じゃあ、どうするんだ❗️私のせいで、世界中で何人もの人が死んでしまった。せめて、罪を償わせてくれ❗️」
論文目当ての欲は無く、彼は純真に罪滅ぼしの為に、死ぬ気で力を注いでいたのである。
「今日はそのために来ました」
「えっ?」
「それは、この私がやります」
「そんな⁉️ラブさんにそんな危険なことはさせられません!」
「そうですよ!無茶です!」
「いくらラブでも…それは無理よ」
佐橋、月島、桐谷の3人が止める。
しかし、ラブの意志は固い。
「私には、細菌や薬物は効かない。怪我の治癒力も人の数十倍まで上げられます。万が一でも、私なら死にはしない。だから、安心してください」
とは言え、未知の鱗粉作用に懸念がないわけではなかった。
「それに…何より佐橋さん、貴方に本当の殺意を、あの蝶に持てますか?生物学者である貴方には殺すことはできても、心までは変えられないはず」
「それは…」
ラブの指摘は正しい。
ただ殺すだけなら、機械と変わらない。
「私は、人の言う6つの感覚をコントロールできます。殺意でさえ…意図的に可能なのです」
味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚、そして第6感と呼ばれるもの、更には痛覚までも制御できた。
苦渋ながら、この実験に最も相応しいのは、ラブを置いて他にはいない。
「佐橋さんと風花さんは、アイと連携して、あの鱗粉の正体と確証データを必ず掴んで下さい。よろしくお願いします」
それ以上議論の余地はなく、準備に取り掛かった。
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