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早朝から、二手に分かれての調査となった。
イースター島は3つの火山で出来た火山島で、三角形の形の各頂点に、カウ山、テレパカ山、カティキ山があり、いずれも休火山である。
道路の整備はあまり行き届いてはいないが、総面積164平方Kmの島では、最寄りの道路から歩いて十分目的地へ着ける。
1日かけて様々な調査を行い、検体も採取したが、有害なガスや異常なものは何も得られず、島民全員の健診結果にも異常はなかった。
しかし、帰り支度をしていた頃。
新たに2人の村民の遺体が発見された。
「崖から転落…にしては、その痕跡はないな」
「あの距離だと、走って来て…飛び降りた?」
知らせを受けた葛城夫妻が、現場へ行った。
2人は兄弟で、親は先日の被害者とのこと。
他の調査機関は、被害者の一体を、検体として持ち帰ることになっていた。
病原体キットは持参したが、的外れであり、検査装置もない現地では、何もできない。
葛城夫妻も、この2人の内1人を、検体として日本へ持ち帰ることを考えた。
〜東京台場〜
TERRA 18スタジオ。
ブランドスポンサーの新作水着を着て、写真撮影をしていたラブ。
ここぞとばかりに、次々と着替えさせられ、マネキン状態のところへ、凛の手招きが入った。
「も、もういいかしら💦」
「そうですね、沢山撮れたし、スポンサー達も満足してる様です。お疲れ様でした。着た水着は、いつも通り提供してくれるそうです」
今日のスポンサー3社を担当し、カメラマンとセットの係にも気を遣い、ヘトヘトの彼。
「あなたもお疲れ様。水着…こんなに💧」
ラブの着るもの履くもの着けるもの等々、全て世界中のスポンサーからの提供品である。
言わば生きた広告。
同じものを身に着ける暇はない。
定期的に係の者がチャリティーオークションに出し、多額の売り上げは、様々なところに寄付していた。
「嫌味なくらい胸あるのね💧」
「普段はサポーターで隠してるからね〜欲しい?」
「要らないわよ、邪魔になるから💦」
凛からスマホを受け取るラブ。
「お待たせ。誰かな?」
「あの…お久しぶりです。葛城玲衣です。折りいってご相談が…」
「玲衣さん!確か今パスクア島に行かれてるんですよね?」
「パスクア?」
「あ…それは正式名称なの💦ごめんなさい。イースター島でしたね」
現地語名はラパ・ヌイ。
正式名は、スペイン語でパスクア島と言い、復活祭(イースター)を意味するところから、日本では、英称由来のイースター島と呼ぶ。
「感染症ではないと聞いたけど、原因は何?」
「それがまだ分からなくて。身寄りのない検体を一体持ち帰って、詳しく調べてみたいのですが…何とかならないでしょうか?」
玲衣はTERRAの医療機関で研究していたことがあり、トーイ・ラブとは面識があった。
「分かったわ。TERRAの責任で、厚生労働省の許可を得るから任せて。くれぐれも慎重にね。TERRAのラボを空けとくわ」
ラブとしても、3000人死亡した事件を、原因不明のままにはしておけず、受け入れた。
「ありがとうございます❗️では、忙しいところをすみませんでした。助かります」
「いえ、助かったのはこっちよ💦玲衣さん、水着要らないかな?」
「はい?」
「あ…何でもないから💦じゃあ気をつけて」
電話を切った。
タブレット端末を見る、新咲凛の表情が気になる。
「何、凛?」
「イースター島の被害者リストだけど、この2人…確かロシアの学者よ」
生物科学者
アレクサンドル・ペトロフ・トルストイ。
生物考古学者
イリーナ・ロカザフ・トルスタヤ。
「夫婦の学者ね。考古学はあって然りだけど、生物化学?一体あの島で何の研究を?」
ロシア人の夫婦の場合、女性側の苗字には『ア』か『ヤ』が付く。
「ラブ、この後あなたは、またハリウッドだから、私は現地に飛んで、ラボを探ってみるわ」
「了解。気をつけて」
外れたことのない、嫌な予感がしていた。
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