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【2】始まり
〜TERRA〜
医療機関フロアの奥。
幾つかの研究用ラボがあった。
検体の遺体を運び込み、密封されたケースから、台に乗せる葛城夫妻。
無事であることを確かめ、MRIにかける。
「葛城博士、ラブが来ています。入り口までお越しください」
部屋のスピーカーで受付が伝えた。
「まずはお礼を言わないとな」
2人で出て行く。
医療機関の入り口で、主たるメンバーに、検体と博士達の説明をしていたラブ。
思わね人の声に振り返る。
「ラブさん、こちらだと聞いたので」
「花山警視総監、驚きました!そちらは?」
「孫の智代梨です。今日はお守りを頼まれましてね」
「花山さんも、お爺ちゃんですか。ハハ」
「いやいや、懐いてくれて可愛いものです」
「智代梨さん、ラブです。よろしくね」
恥ずかしそうに握手する。
「ラブさんのファンですよ。よく歌ってます」
「あら、ありがとね〜。ところでご用件は?」
「刑事課に頼もうかとも思ったのですが、やはり体面的に少々不都合なもので、ラブさんならと…」
「花山さんの頼みなら何なりと」
「実は、先日の爆破事件の功労を讃える式典を行うことになり、彼にこの案内状を渡してもらえるかね?感謝状を授与する約束でして💦」
「飛鳥神ですね。確かに…💧分かりました。届けて、必ず出席して貰います」
「くれぐれも、車列などない様に頼むよ💦」
焦り気味な花山を初めて見た。
「真っ赤なベンツも…ですね。TERRAから迎えに行きます」
「そうして頂けると助かるよ」
「宜しかったら、上のラウンジでランチでも?私も直ぐに行きますので」
「おお、もう昼か。ではお言葉に甘えて」
そこへ葛城夫妻が来た。
「ラブさん、今回はお世話になります」
「玲衣さんお久しぶり。相変わらず仲が良いわね。こちらのメンバーにも話してありますので、必要なら声をかけて下さい。特にこの開発部長の月島風花さんは、天才的頭脳ですから」
「ラブさん、困ります💦」
「おや、あなたが月島さんでしたか。警視総監の花山です。あなたにも感謝状を贈らせて貰いますので、案内状を送付してあります」
「マジで⁉️あ…いや💦すみません。謹んで頂きます」
「では下村さん、ご案内を」
花山を連れてきた、受付の下村香織に指示をするラブ。
と、その時。
葛城優磨の肩にとまっていた蝶が、智代梨の肩に移った。
「可愛い〜」
「おっと、私よりお嬢さんの方が気に入ったようですね。全く無害ですし、水と光さえあればいいので、良かったらどうぞ」
「本当に!お爺ちゃんいい?」
「おじ…💧あぁ、可愛いね、いいよ」
「やった〜!」
下村に目で合図するラブ。
「では、こちらへ」
軽く会釈して一旦別れる。
「警視総監ですか、さすがに顔が広い」
(広いと言うか…腐れ縁みたいな💦)
「ところで、不可解な事件になりましたね。何か分かったら教えてください。私も折を見て現地の救済に行く予定です」
「そうですね。村長もチリ政府も頭を抱えているはずです」
「でしょうね。では、私はこれで」
「忙しいところを、ありがとうございます」
警視総監を待たせるわけにはいかない。
エレベーターへ向かう。
途中、1人の男性とすれ違った。
(…誰?)
闇の意識を感じたラブ。
「葛城!来てやったぜ」
「おお、佐橋!生物学の知識を借りたくてな」
(知り合いの学者か…)
背後の挨拶を聞きながら、やり過ごした。
しかし、この時ラブが感じた闇が間違いでは無かったことを、後で知るのであった。
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