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〜ロシア〜
モスクワのアララト・ハイアットホテル。
正装の5人が夕食の円卓を囲む。
「将軍、島のラボは爆破されました」
「まぁ…片付ける手間が省けましたな」
「ラブか…役に立たない奴等」
「いえ、連絡ではラブではなく、バイクに乗った別の女だった様で…」
「すみません。たった1人に、簡単にやられるはずはないのですが…」
将軍の目が鋭くなるのを見て、年配のサルコフが、先に口を挟む。
「やられたではないか。しかも、相手はラブではない女とは。やはり女のお前の見立てでは、甘いんじゃないか?」
「クッ…」
剣術と銃の腕は、ロシアでNo.1と称されたミネルヴァが、悔し気に下を向く。
「フゥ…まぁいい。そいつは、元最強の暗殺者と呼ばれた、箔・博凛だ」
サルコフの気配りに気付かない将軍ではない。
「博凛は、東京で死んだと聞いたが?」
同じ世界に生きる、殺し屋ツヴェンサー。
将軍の右腕となり、身辺警護に就いていた。
「いずれは、お前に頼むかも知れないな」
「喜んで。楽しみが一つ増えた」
「ところで将軍、爆破したと言うことは、秘密を知られたのでは?」
策士で技術者のザイール。
「中国人の殺し屋如きに、分かるわけはない」
ワインを片手に、笑む将軍。
「博士の研究は成功したようですな」
「まさか、あれが真実だったとは…正直なところ、驚いている。あの2人には可哀想なことをした」
そう言いながら、満足感に浸る将軍を、心底恐ろしいと感じるサルコフ。
(いったい何が将軍を変えたのやら…)
「世界は暫し、混乱と恐怖に陥るでしょう」
「だろうな。ザイール、東京へは?」
「既に手は打ってあります」
「ラブや警察がどうなるか、楽しむとしよう」
ワインを変えに来たウェイターが、それを聞いて立ち止まる。
「し…失礼しました。冷えたワインと取り替えようかと思いまして…」
「下がれ」
告げた将軍の目は、ツヴェンサーにあった。
「バシュ!」
命と判断し、瞬時に撃った。
額を撃ち抜かれ、ウェイターが後ろへ倒れる。
「おっと、これは頂こう」
弾みで投げ出されたワインボトルを、ザイールが掴み取った。
テーブルに戻り、何事も無かったかの様に、夕食を続ける5人であった。
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