【2】始まり

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〜ロシア〜 モスクワのアララト・ハイアットホテル。 正装の5人が夕食の円卓を囲む。 「将軍、島のラボは爆破されました」 「まぁ…片付ける手間が省けましたな」 「ラブか…役に立たない奴等」 「いえ、連絡ではラブではなく、バイクに乗った別の女だった様で…」 「すみません。たった1人に、簡単にやられるはずはないのですが…」 将軍の目が鋭くなるのを見て、年配のサルコフが、先に口を挟む。 「やられたではないか。しかも、相手はラブではない女とは。やはり女のお前の見立てでは、甘いんじゃないか?」 「クッ…」 剣術と銃の腕は、ロシアでNo.1と称されたミネルヴァが、悔し気に下を向く。 「フゥ…まぁいい。そいつは、元最強の暗殺者(アサシン)と呼ばれた、箔・博凛だ」 サルコフの気配りに気付かない将軍ではない。 「博凛(フーリン)は、東京で死んだと聞いたが?」 同じ世界に生きる、殺し屋ツヴェンサー。 将軍の右腕となり、身辺警護に就いていた。 「いずれは、お前に頼むかも知れないな」 「喜んで。楽しみが一つ増えた」 「ところで将軍、爆破したと言うことは、秘密を知られたのでは?」 策士で技術者のザイール。 「中国人の殺し屋如きに、分かるわけはない」 ワインを片手に、笑む将軍。 「博士の研究は成功したようですな」 「まさか、あれが真実だったとは…正直なところ、驚いている。あの2人には可哀想なことをした」 そう言いながら、満足感に浸る将軍を、心底恐ろしいと感じるサルコフ。 (いったい何が将軍を変えたのやら…) 「世界は暫し、混乱と恐怖に陥るでしょう」 「だろうな。ザイール、東京へは?」 「既に手は打ってあります」 「ラブや警察がどうなるか、楽しむとしよう」 ワインを変えに来たウェイターが、それを聞いて立ち止まる。 「し…失礼しました。冷えたワインと取り替えようかと思いまして…」 「下がれ」 告げた将軍の目は、ツヴェンサーにあった。 「バシュ!」 (めい)と判断し、瞬時に撃った。 額を撃ち抜かれ、ウェイターが後ろへ倒れる。 「おっと、これは頂こう」 弾みで投げ出されたワインボトルを、ザイールが掴み取った。 テーブルに戻り、何事も無かったかの様に、夕食を続ける5人であった。
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