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ふわふわ、時々ずっしり
ナオくんの笑顔はふわふわ甘いわたあめみたいで、向けられる度に幸せな気持ちになる。
でも、ナオくんと付き合い始めてから、彼の新しい表情も発見するようになった。
「おにーさん、超タイプなんだけど! ちょっとだけでいいから、私と遊んでかない?」
ナオくんと繁華街をデート中、私と手を繋いで歩いているにも拘わらず、見ず知らずの女性にそんな声をかけられた。
こういうことって、実は物凄い頻度でよくある。
ナオくんのすぐ傍でそれを見ているのはもちろん嫌だし、とても辛いんだけど……
「あ? 彼女とデート中って見て分かんねぇ?」
急に表情も態度も豹変させたナオくんに、私は毎回ビビっている。
私には向けられたことのない表情なだけに、見かける度に怖いと思ってしまう。
不機嫌という言葉をまさに全力で表現しているその表情を見ても、
「おにーさんみたいなイケメンが、一人の女に縛られるなんて勿体ないって」
逆ナンをしてくる女の人って、そう簡単にはめげないみたい。
「……うざ」
盛大に舌打ちをしたナオくんは、
「行こう、ゆづ」
ムッとしたまま、私の手を強く引いて足早にその場を後にした。
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