パティシエ修行

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「ただいま、ナオくん」 靴を脱いで上がったところで、ナオくんに正面からぎゅっと抱き締められる。 「ナオくん……?」 「やっぱり……ゆづが他の男と話してるとこ見るのは、いい気がしない」 「えっ」 不機嫌そうな低い声に、私の体がびくっと強ばる。 「セクハラとかされなかった?」 壊れ物に触れるかのように私の髪をそっと撫でてくれるナオくん。 その優しい手つきに、ずっと緊張で気を張っていた私はやっと体の力が抜けた気がした。 「うん。大丈夫だよ」 「されたらすぐに俺に言えよ? ……ゆづに触れたヤツがいたら、その手へし折りに行くから」 ……多分冗談なんかじゃなく、きっと本気だ。 でも、 「うん、ありがと」 ナオくんのその気持ちが嬉しくて、彼の背中に両腕を回す。 ぎゅっと強めに抱きつくと、ナオくんは私を抱き締める腕に更に力を込めた。 「食欲ないってメッセージは読んだけど、スープだけ作っといた。飲む?」 「うん、飲む。ナオくんから美味しそうな匂いがする」 すんすんと鼻を鳴らすと、ナオくんは私の体を離して苦笑する。 「いい匂いって言われたら嬉しいけど、美味しそうってのは何か微妙だな」 そんなこと言われても……本当に美味しそうな匂いなんだもん。
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