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「……!」
何を言われたのか一瞬理解出来ずに口をパクパクさせていると、
「俺なりにすっげぇ頑張って選んだんだけど、見てくれねぇの?」
今度は寂しそうな顔をしたナオくんが、私の前に差し出したピンクの箱を指差した。
これが何なのか、いまいちピンときてなかったけれど、もしかして――
ドラマとかでよくある、女の子なら誰もが憧れるあのシーンなのでは……?
でも相手は私なわけだし、そんな綺麗な展開になるわけがない。
それでも勝手に震えてしまう手で箱を持ち上げて、ゆっくりと開くと――
「!」
そこには、銀色のリングにダイヤモンドが嵌め込まれた指輪が入っていた。
よくある婚約指輪の形とは少し違って、服などに引っかからないように石が低めの位置に設定されたデザイン。
「ゆづとは付き合って間もないし、それ以前にゆづはまだ学生だし、早すぎるっていうのは十分分かってるけど 」
ナオくんの声に、私は手元の指輪から顔を上げて、彼の真剣な顔を見た。
「ゆづはもうどこにも行かないって……俺から離れないって約束して欲しくて」
「……」
「仕事中とか実技授業の時は無理でも、それ以外の時はずっと付けてて欲しい」
テーブルの上で、ナオくんにきゅっと優しく手を握られる。
「俺のお嫁さんになってよ、ゆづ」
“結婚しよう”よりも、その言葉の方がすんなりと私の中に落ちてきた気がした。
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