パティシエ修行

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ナオくんの背後に見えるキッチンには、お弁当のおかずがまだお皿に乗せられた状態で置かれている。 「ナオくんのお弁当はまだ詰めてないの?」 そういえば、(まかな)いが提供される職場で働いているナオくんが、自分でお弁当を持って行くこと自体がそもそも珍しい。 それが、今日に限ってお弁当持参だなんて。 「俺のは……ゆづの見送りをしてから後で適当に詰めようかなって」 ナオくんの視線が泳いでいて、私とは目が合わない。 ――これは、ナオくんが嘘をついている時の目だ。 もしかして……本当はお弁当なんか必要ないのに、“ついで”を装って私のために作っただけなんじゃないのかな。 ナオくんなら、そういうこともしれっとしそうだ。 「ナオくん」 視線を逸らしたままの彼に、正面からぎゅっと抱きつく。 「!」 ナオくんは突然のことに驚きながらも、私の体に両腕を回してぎゅうっと強く抱き締め返してくれた。 ナオくんの温かい体温が心地いい。 「松野さんにいじめられたら、すぐに俺に言うんだぞ?」 そんなこと、本当は1ミリも思ってないくせに。
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