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「大丈夫だよ。ナオくんもお仕事頑張ってね」
名残惜しいけれど、ナオくんから体を離して、大事なお弁当の入ったトートバッグを肩にかける。
玄関で靴を履いて、
「じゃあ、行ってきます!」
手を振る私の手首を不意に掴んで引き寄せたナオくんは、私の唇に静かに唇を落とす。
その甘さに驚いて、宝物のお弁当が入ったトートバッグが私の肩からずり落ちて、下に落としそうになった。
それを手でそっと支えてくれたナオくんは、私からゆっくりと唇を離すと、
「行ってらっしゃい。気を付けてな」
いつも通りの、ふわりと甘く優しい笑みを浮かべた。
このナオくんの笑顔って、何かに似ている気がする。
うーん、何だったかな……
そんなことをナオくんにバレないように密かに考えながら、アパートを出た。
最近、自分の住んでいるアパートには着替えを取りに戻るくらいで、殆どの日数をナオくんの部屋で過ごしている。
今日も、仕事が終わればナオくんの部屋に戻ってくるようにと彼から言われていて。
ナオくんの言い分は、
『俺の部屋からの方が学校もバイト先も近くて通いやすいだろ?』
ということなんだけど。
これってつまり――半同棲というヤツなのでは!?
とか考えて、また1人で真っ赤になる。
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