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「ずっと厨房の様子を窺っているようにも見えますし、少し警戒した方が――」
女性スタッフが言いにくそうにそう告げて、
「あぁ……一人で来てるあの男ね」
友季さんは該当のお客さんを確認後、
「森川。ちょっと俺と一緒にお客様の対応来て」
私の方を振り返って、意味ありげにニヤリと微笑んだ。
「えっ……」
コック帽を取った友季さんを見て、私は苺の果汁塗れになった手を慌てて洗い、友季さんに倣って帽子を取った。
その帽子を両手で抱えたまま、友季さんの後ろについてカフェスペースへと向かう。
他のお客さんへと“いらっしゃいませ”と声掛けをしながら突き進み、例のサングラスをかけた怪しい男性客の前に2人で並んで立って――
「……結月ちゃんのこと応援したいなら、もう少し違う見守り方出来ねぇの? 直人」
酷く迷惑そうな溜息をついた友季さんが、目の前のお客さんにそう言い放った。
「……」
黙って俯いたまま、動かないお客さん。
それが、まさかナオくんだったとは全く想像もしていなかった私は、
「えっ? ナオくん!? なんで? 仕事は!?」
友季さんの隣で軽くパニックを起こしていた。
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