パティシエ修行

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でも、なんでそんな嘘を……? ナオくんの考えていることが分からなくて段々と不安になってきた私は、黙ったままナオくんの顔を見つめた。 「……」 ナオくんは気まずそうに目線を逸らしたまま、相変わらず私と目を合わせようとはしない。 「お前さ。結月ちゃんのことが心配なのは分かったけど、これじゃあ結月ちゃんが仕事に集中出来ないだろ」 呆れたような友季さんの声に、 「……分かった。帰るよ」 ナオくんは小さく溜息をついて、席を立とうとする。 「あっ、コーヒーのお代わりを……」 丁度2杯目のコーヒーを運んできたカフェスタッフが困惑したように声をかけて、 「……じゃあ、これ飲んだら帰る」 余程の理由がない限り、飲食物を残すことを激しく嫌うナオくんは椅子にペタンと座り直した。 そんなナオくんに、 「今ならまだ、結月ちゃんが仕上げてくれたフルーツタルトが残ってるけど」 友季さんは挑発的な眼差しを向ける。 「……」 「ラス2だから、売り切れるのは時間の問題かな」 確かにショーケースの中のフルーツタルトは、さっき並べたばかりなのにもう残りが2つだけになっている。 「じゃあ……それも1つ下さい」 受け取ったばかりのコーヒーを一口(すす)ってから、ぼそりと告げたナオくんに、 「毎度ありー」 商売上手な友季さんはニヤリとほくそ笑んだ。
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