パティシエ修行

1/23
276人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ

パティシエ修行

今日は、私――森川(もりかわ) 結月(ゆづき)が内定をもらった洋菓子店『パティスリー・トモ』で初めて働く日。 今はまだ専門学校生だからフルでは入れないけれど、研修を兼ねてアルバイトとして入社する。 学校が休日の今日は、朝から夕方までの勤務の予定だ。 オーナーシェフの松野(まつの) 友季(ともき)さんとは前から顔見知りだけれど…… プライベートと仕事ではきっと全然雰囲気が違う。 知り合いだからって甘えないようにしなくては。 とにかく、一日でも早く仕事を覚えて、あのお店の戦力にならなくちゃ。 制服はお店で着替えるので、通勤の服は特に指定はないらしく。 それでも初出勤日なので、カジュアル過ぎないキレイめの服装で行くことにした。 そして、 「ゆづー。一応、弁当作ったけど……」 私のことを“ゆづ”と呼んだ彼――間宮(まみや) 直人(なおと)が、淡いピンク色の巾着袋を差し出してきた。 彼は私の幼なじみで……私の、とてもとても大好きな彼氏。 子供の頃から料理が得意な彼は、現在イタリアンレストランの料理人をしていて。 今日は彼も出勤日で、自分の分のついでに私のお弁当を作ってくれたのだ。 「わ! ありがとう、ナオくん!」 お弁当を両手で受け取ってそう言うと、 「ん」 ナオくんは少しだけ照れくさそうな顔をしながら短く返事をした。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!