54人が本棚に入れています
本棚に追加
公園で
祐一の会社の前には、デデンと大手の有名コンビニがあり、そこそこ何でも揃っているのでよく利用する。
――今日はサラダと食パンとコンビニブランドの珈琲豆・・・
とカゴに次々と放り込んでいく。
そういえば使い捨ての髭剃りがなくなりかけてたな、と思い出してソレもカゴに入れ、 何となくレジ前で売ってるチキンが食べたくなり注文する。
精算中に煙草が目についてカートンで買った。買い置きがもう無いはずだ。
――高いけどなあ~
と思いながら、支払いを済ませる。
ほぼこれ、税金だよなと苦笑い。
それでも禁煙する気はさらさら無い。
一度禁煙をやってみたものの、食費の方が嵩む上にコレステロール値のほうがヤバくなったことに気がついたのでやめた。
死ぬときは肺がんかもしれないが糖尿病よりはずっとマシだとソレが原因で死んだ、曽祖父を思い出してそう決めた。
男性従業員がお釣りを渡しながら
「あっりがとうございました~」
と唄うように言う。
どこからあんな高い裏返った声が出るのかが不思議だ、と首をひねりつつコンビニを後にした。
祐一の住む場所は会社から歩いて40分くらいの所である。
公共交通機関を使うには近すぎ、徒歩だとちょっとだけ荷物が邪魔に感じる位の距離だ。
いっそ自転車でも買うかと思いつつ気がついたら5年がすぎた。
『まあ、いいか』
この口癖でスルーするのが祐一の常である。
コンビニの袋とカバンを一緒に右手に持ち歩き始める。
公園を通り過ぎ、すぐグレーの壁が見えたら、そのマンションが祐一の自宅である。
公園前でふと気になって子供用の遊具のスペースを見ると、動物の形のオブジェの辺りに人が立っていて、こっちに向かって手を振っている。
「?」
目を凝らしてよく見るとさっきの受付嬢である。
「神谷さん~!」
こっちに向かって歩いてきた。
――えぇ~。今さっき会ったばっかりなのに何で名前を知ってるの!?
かなりびっくりしたが、かわいい女の子が自分に向かって声をかけてくれるのはちょっと嬉しい。
「えと、君に名前を教えたっけ?」
ニコニコ笑いながら近くまでやって来た受付嬢。
「ビルの清掃の方に教えてもらいました。それより神谷さん、明日何処かにお出かけになるご予定とかはありますか?」
「え、い、いや?」
「わあ、良かった~。じゃあ明日、私とお出かけとかしませんか?」
ちょっと待て。この子、今なんつった!?
最初のコメントを投稿しよう!