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「だってさ、ちょっとイキナリ過ぎでしょ? 信じられないって言うと悪いと思うけど。ね、付いてきたのって何か理由があるんじゃないの?」
祐一が首を傾げると、長過ぎる前髪がサラリと落ちてきた。
――うげ。絶対朝イチで散髪だなこりゃあ。
「えーと、何処から話すといいでしょうか」
スプーンを置いて、真面目に応対しようとする麗奈。
――あ~、やっぱりこの子真面目なんじゃないかな。 知り合ったばっかりの男の部屋に押しかけるような子じゃ無いはずだよ。多分だけど・・・
「あ、やっぱり冷めないうちに先に食べてからにしようか」
「あ、はい」
またスプーンを手にとって食べ始める。
――やっぱり可愛いよな~。
と横目でチラチラ見てしまうのは男の性だ。しょうがない。
目を逸し、サラダをモグモグしながら天井を見ながら完食した。
「えとですね、実はお願いがあって」
食べ終わってソファーに移動してから麗奈が切り出してきた。
――うん、そうだよな、そんな美味しい話はあるわけ無い。
「実は結婚を前提に、お付き合いをしてほしいんです」
飲みかけた水を思いっ切り吹いて、コップに全て戻してしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
「ゲフッ、いや大丈夫。でも、そもそも何で俺なの? 君なら俺みたいに冴えない男じゃなくてもいいんじゃないの?」
「え、ピンときて。この人だって感じだからです。さっき言ったでしょう?」
「あ、はい。聞きました」
「不束者ですが宜しくお願いしますね」
顔は日本人とは言い難いのだが、三つ指をつかれるとつい畏まってこっちも正座をしてお辞儀をしてしまう。
「付きましては、私の両親と祖父に会っていただきたいです。あと、出来れば祐一さん、キャッ♡ の御両親にもお会いしたいです~」
両手で自分の、頬を抑えて恥じらう麗奈。
「実は特殊な事情が有りまして、週末毎にお会いしたいのですがどうぞ宜しくお願いしますね!」
彼女はペコリと頭を下げた。
どうやら明日、どうしても彼女と出かけなければいけないらしい。
――うーん、布団が干せないのがちょっと痛いかもしれない。でも可愛い子とのデートだしなあ。やっぱり布団乾燥機買おうかな~。
ちょっと遠い目になって、どこで買うかを頭で算段している時点でお付き合いは決定事項として考えている事に気が付かない祐一。
「どうしたんですか?」
「いや、ああ。布団乾燥機を買おうかなーって考えてて。毎週末出掛けると布団が干せないかなあと思ってさ・・・」
急に麗奈の顔がボンっという効果音が付きそうな勢いで赤くなり、ソレを見てハッと気がつく祐一。
ソレってつまり彼女の申し出を受けたことになるわけで・・・
顔を赤くしたのは麗奈だけではなくなった。
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