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僕と殺し
僕の運命の人。
僕の女神。
僕は丁寧に彼女のそのほっそりとした足に頬ずりしていた。
今はもう跡形もなく僕が壊した実家から持ち出した、紅絹の着物から覗く白い足はなんとも色ぽっくて。
とても興奮した。
「あぁ。なんて綺麗なんだ」
柔らかく瑞々しい太ももからゆっくりと脛に向かい愛情を込めて頬を唇を這わす。
仄かに香る彼女の香りが心地良くて僕は口元がつい緩む。
彼女はくすぐったいのかふうっと吐息をこぼすのみ。まるで美しい生き人形のような彼女。
夢か現を彷徨うような美貌にくらくらするが、彼女はれっきとしたヒトである。
その彼女の吐く吐息すら、肺に吸い込んで僕の中で循環したいと思う程に愛しい。
「好きだ……愛している……」
そして薄っすらと血管がうく百合の花びらのような足の甲に、まるで忠誠を誓う騎士のようにひときわ長くキスをして。
我慢が出来なくなって、べろりと舌を這わした。
その反応のに彼女の足はぴくぴくと動いた。
「うん、今日は君の為に頑張るからね……先にご褒美を頂戴……んっ」
そのまま僕は彼女の足の親指を口に含んだ。
舌で丁寧に親指の付け根を舐める。
ぴちゃりと子猫がミルクを飲んでいるような音が響く。
僕は夢中になって彼女の繊細な足の指を丹念に丁寧に、そして時折荒々しくしゃぶる。
舌先で、歯で、口腔内を余す事無く使い、熟れた桃を貪るが如く彼女を味あう。
その度に舌の味蕾の一つ、一つが研ぎ澄まされていくようで、ひどく興奮した。
──彼女の全てが愛おしい。
小指まで舐め終わり、ほてる僕の唇をそっと離して。その愛しい名を呼んだ。
「くーちゃん。ずっと、ずっと一緒にいようね。そのために僕は──何でもするよ」
彼女、くーちゃんはとてもきれいな黒髪をサラリと揺らした。
僕はそれに満足して、そっと檻から出て、しっかりと鍵をかけた。
大型犬用の頑丈なゲージは大人の一人分くらい余裕で入る。
かしゃんと、錠が閉じる音にくーちゃんはいつも黒目がちな大きな瞳を震わせた。
ごめんね。
くーちゃん。
こんなところに閉じ込めて。
これは君を守る檻でもあるんだ。
そう、全ては。
「──君の為。行ってくるね」
僕はそのまま、未だ口の中に残るくーちゃんの感触を名残惜しく思いながら、そっと部屋を後にした。
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