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間もなくして志音が
青い花柄のポットと
揃いのティーカップを運んできた。
「まずは温まりましょう。あ、そうだ。一応、確認しておかないとね。優莉さん、お薬って何か飲んでる?」
小首をかしげて
目の前に立つ美女に
圧倒されながら
優莉は「いえ」と
首を横に振った。
「そう、なら大丈夫ね。ハーブティーはね。お薬の効果を妨げてしまうものもあって、飲み合わせには、注意が必要なの」
志音は、にこやかに微笑むと
お茶をカップに注いだ。
コポコポと注がれるお茶から
湯気が、ゆらゆらと上がる。
「これはセントジョーンズワートっていうお茶なの。どうぞ」
そう言われて
差し出されたお茶は
薄い緑色をしている。
「少し、気分が落ちている感じがしたの。このお茶は、古くから『心の疲れ』に効くって言われてるのよ」
話ながら、志音は
ゆっくりと椅子に腰かけた。
「召し上がってみて。淹れたばかりだから、あまり癖を感じないと思うんだけど、ダメだったら教えてね」
「あ、はい。わかりました。いただきます」
優莉は、青い小花が舞う
カップを両手で持ち上げると
静かに啜った。
最初は少し、薬草のような
青臭さを感じたが、後から抜けていく
菊のような香りが爽やかだ。
「あ、美味しいです」
志音は、微笑みながら頷いて
テーブルの角に置いてあった
クリアファイルを引き寄せる。
耳にぶら下がっている
雫型のアメジストが揺れた。
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