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その夜、優莉は
一度は眠ったのだが
夜中に 目が覚めてしまった。
脳が疲れているのか
頭だけは、冴えてしまう。
仕方なしに
スマホを取り出して
動画を流す。
すると、ある猫に目が留まった。
どこかの庭らしき所を
トコトコと歩いて来る
可愛らしい黒猫。
テロップには
『甘えん坊のやまとくん』
と流れてきた。
「なーん」と鳴いて
撮影者らしき人の足元に
すり寄って動画は終わるのだが
向きを変えた時に、チラッと見える
尾が2つに見える。
「えっ?」
猫は、長生きすると
しっぽが分かれて2本になり
猫又という妖怪になると
言われている。
都市伝説的な話だが
ふわりと画面を横切った
その猫の尾は、2本に見えたのだ。
慌てて
その動画を探す。
しかし、なぜか動画は
いくら探しても出ては
来なかった。
変わった名前のお店、
どこかの看板猫だったと
思い出してみる。
「確か…ヴェルディとか言う」
ひねり出して、思い出した名前を
入れてみると、『ヴェルデ』で
それらしいSNSを見つけた。
『疲れた貴方に、スピリチュアルな癒しの時間でおもてなし』
そこは【スピリチュアルカウンセリング】を
行っているお店のようだ。
元々、そういった占いや
カウンセリングなどに
興味があったわけではないが、
なんとなく気になった。
【ヴェルテ】と書かれた
店名らしきものをクリックすると、
小さな庭が映し出された。
「ここ、さっきの・・・」
先ほどの黒猫がいたらしい庭には
色とりどりの花を咲かせている
プランターがいくつかあり、
地植えされた木には
黄色の小さな花と実がついており
手入れの行き届いた庭のようだった。
そして、その隣には
洋風な家が写っている。
白塗りの壁に
大きな玄関があり、
屋根が三角に尖っていて、
そこには 煙突らしきものが見えた。
「まるで、絵本に出て来そうな家…」
スクロールしてみたが
探していた猫は出てこなかった。
優莉は、また目を閉じようと
指で タップしかけた時に
一文に目が留まった。
『当サロンは 軽いお食事を召し上がっていただきながら お話をさせていただきます。ランチにいらっしゃるようなお気持ちで どうぞお気軽にお越しくださいませ』
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