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第二章 初対面
少し街中から離れた駅で、
優莉は車を待っていた。
駅からは、少し距離があるとのことで、
先日、予約を取ったヴェルデの
カウンセラーが迎えに
来てくれることになったのだ。
10月も下旬、
日差しは当たると暖かいが、
うすら寒く感じる季節になった。
平日の昼という事もあって、
人もまばらな駅のロータリーの前には、
大きな『しだれ桜』の木が立っている。
春には、とても
美しいであろうこの桜は
今は、紅葉した葉を散らしては
揺れていた。
その様子を
ぼんやりと見つめていると
丸い目が特徴的な
白い一台の車が
優莉の前に停まった。
「優莉さんですよね?」
アルトトーンの
耳障りのいい声が聞こえた
車の窓を覗き込むと
ホームページで見た
女性が微笑んでいる。
「あ、はい!志音さんですよね」
「えぇ、お待たせしてすみません。さ、どうぞ」
優莉は頷いて
後部座席のドアを開けて
車に乗り込んだ。
「この先の坂の上に、当サロンがございます。5分も走らない程度で着きますから」
「わかりました。よろしくお願いいたします」
優莉の返事を待ってから
車は、ゆるゆると動き出した。
前を見ると
バックミラー越しに
微笑んでいる志音と
目が合った。
「今日は日が出ていますけど、やはり寒かったでしょう?」
「いえ、大丈夫です。それほど待っていませんから」
「この辺りは、街中に比べて2、3度は低いんですよ」
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