きっとあなた フェチ 6

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❁ Ⅹ ❀✿❁❀ ✿ …… 誰か! 古井さんよりも     強い人 呼んで下さい!     ここで! これ視て          注意して下さい!…… ― 『 おかえりー!』       「 おかえりなさいませ 」 「 只今戻りました 」       … ペコリ 頭を下げても髪は 乱れず 高級スーツ に身を包んだ男性は フロントに丁寧な 口調で挨拶すると2重ロックされている エントランスを通り ご自分の部屋へと 上がられる ― このマンションは  都心の一等地のタワマンで大手不動産管 理会社が管理している グレードの高い仕様の高級マンションだ けど分譲ではなく 定期借家契約での かなり高い家賃 で 貸し出されていて だから  ここの入居者は 法人契約で入いる方々 がほとんどで ごく一部が 個人契約の 方々だけど その個人で契約の場合 ここの高い家賃 の " 3倍以上の月収 ” が ないと 借りる事はできないから その方々はと ても 高所得者 の 方々で … そんなフロントサービスつきの高級賃貸 物件 建物は都市型タワーマンションの グッドデザインアワードにも輝いた処 なの です が … 先ほど エントランスホールに大きな声 が響き渡ったとおり なぜか そのフロントには かなりの 貫禄を出した コンシェルジュが 黒光 りする大理石フロントカウンターの上に 自分の飲みかけの ストローの刺さった コーヒーカップを堂々と置き  それをチビチビ飲みながら 椅子に腰か けたまま 自分の前を通り過ぎるご入居 者様にちゃんと声が届くようにと ? 大声で乱暴にも聞こえるワードで声掛け をしているのです その横 に 腰かけているワタシは それに首を傾げるのですが   … このひとなんなんだろ … ワタシと古井さんはコンシェルジュで ご入居者様対応のために ここに居て 古井さんはこのマンションが建った頃か らここに居るコンシェで いまの管理会 社ではなく前の管理会社の協力会社で採 用に なり そのまま管理会社が変わってもここに居 るので 今年で17年目だそうで  新人のワタシは1年目 で それに さらに ここに入る前から 古井さんは ほかの処でもほかの仕事をしていたから かなりの 大 先輩 で でも 本人は 知らない らしい の ですが  古井さんも いまは  ワタシと同じ会社に所属している コンシェで  その中で この 古井さんは 一番 時給が低いのです それは どうしてなのか … それが ワタシには 不思議だったの です            けれど この高級マンションに この古井さんが コンシェとして入っている事も  実は ワタシには不思議に思う事が … それは  ここにワタシが配属になったから それを目の当たりにしてしまったわけで なので きっと 管理会社は知らないのです … この世の中って そんな廻り方をしているのですね  それを目撃する度           毎日が驚きでした 古井さんは ここに17年も居るのに その時給は都の " これ以上の金額はあ げてください ” の 最低賃金と同じです マンションコンシェルジュ求人をご覧に なると分かるのですが その時給は 建物のグレードや立地により違っていて それに 本人の持つスキルも関係し配属 が決まり なので ワタシが戴いている時給は ありがたい事にかなり高いのですが なので 古井さんとの差も大きく だから なんだ か 不思議なんです まぁ … ここは 分譲マンションよりも   フロントのサービスの種類も少なくて 共用施設のゲストルームは一室だけで パーティルームやカラオケルーム リラ クゼーションルーム シアタールーム に 時間貸のゲスト用駐車場などもない ので その ご予約受付 とかも なく なので コンシェの仕事も その分 ほかよりも 楽で なのですが ですけど  ふたりは同じ仕事をしているのに ?  しかも ワタシ 1年目なのに ?  おかしいですよね それも不思議 で … だし … 古井さんの勤続年数が長いわりには時給 が上がっていかない事も不思議なのです だって 労働契約書には " 昇給は有り ” になっているのですし 不思議に思いますよね 都の最低賃金の 見直しがあった時にはそれに合わせ上が ったそうですが ずっと ずっと 古井 さんの時給は変わっていないんです だったら  1年毎の契約更新の度に  古井さんは それ 気にしないのでしょうか それとも 古井さんの契約書にはその記載が無いの でしょうか 見せてもらっていないので すが そんな事     あるのかな … ワタシは それでは この仕事を続けて いくのに不安すら感じますが なぜ 古井さんは その時給でこの仕事 を続けているんでしょうか 古井さんは 不思議です けれど ここで働いている と それでも なんとなく  気づいてくる事が あって まず  古井さんは ここで 業務外の事で 商売をしていたのです ここは 賃貸なので 入居者の出入りが あって 期間が決められた契約なので とうぜん 退去もなんどもあります が その 時には 粗大ごみも 大抵 発生します その 粗大ごみに関しては コンシェのお仕事ではないのですが 古井さんは  それを請け負ってしまうのです でも 古井さんは小さくて 力仕事はで きないし PCもできないので隣のコン ビニへ “ シール ” を買いに行くだけで その後の手配や移動などは管理人さんが しているのですが その際に 古井さんはPC作業ができな いので リストや金額の見積りもなく なので ザックリとしたキリの良い金額を  ご入居者様から渡されるので  多くの場合   差額が生じるのです  しかしそれは ここのご入居者様は裕福な方々なので 不足分が出ないように多めに 古井さん へ渡すのですし 退去した後には その 差額をワザワザもらいに戻って来ません 世の中ってそうなのですね 古井さんは たくましいです いまはどこでも ? 副業も認められてい る会社も多いので これはもしかしたら そうなのかも ? しれません ? が ? 古井さんの横に座っているワタシだけが これに気づいてしまったようです … ちなみに ワタシは  業務以外の事は致しません … すごいな 古井さん 「 悪いけど 私!  ( 管理会社 ) から  ここ任されてるからさ!」 が 口癖の古井さんです それに  生活力もたくましくて コンシェはご入居者様と同じサービスを 受けてはいけないのですが 古井さんは ここに長いので  そうした協力業者の人たちに対しても 強い立場にあって ? ここに入ってい る クリーニング業者に 自分の私物を 半額の料金にさせています  自宅から ここまで電車通勤なのにワザワザ持って くるのです すごいです どうやって この業者と 話をつけたのでしょうか 「 悪いけど 私!  ( 管理会社 ) から  ここ任されてるからさ!」 これを  あちらこちらに謂うのです たくましいです … なので 年末年始 季節ごと ?  古井さんには業者からの付け届けが … それは ここのstaffへの差し入れでは なく 古井さんへのモノのようで 業者 さんからも「これ!古井さんに!」 と 渡されます けれど それは そうだとしても ? ご入居者からの差し入れの場合でも 古井さんが居ないときに たとえ 「これ皆さんで…」っと 云われたので ほかの者がうけとってしまって それを 皆で分けようとその箱を開けてしまうと 「 それは   個人で ( 古井さんの )  もらってるものだからさ! 」 っと わざわざ? 古井さんに  怒られます なぜ そうなるのでしょう          恐いです … その! 意味が解ったのは それからスグの事でした … 古井さんは 戴きモノのお菓子などは 親しい一部の ご入居者様のお子様へ 自分からの様に配っていたのです なので ? その方々からも また お返しを戴いて いますし           いつも そのようなフロントでの様子を 堂々と横に居るワタシにも みせつけ 自分の存在感を出し なので ここのご入居者様と そんな " 特別な関係の古井さん ” は ここのご入居者様からの差し入れは全て そんな特別な自分のモノだと思っている ようなのです 世の中 このお菓子の様に そうやって 廻っているのですか ? けれど ここのご入居者様は裕福な方々なのに そのお菓子を古井さんから渡されても それに 好みもありますでしょうし  アレルギー面などでも  その行為は 『 はーい!  これ! あげる! 』 っと 大声で!  強く 差し出されれば その横で ワタシも それを観ている ので それでは 逆に ? そのご入居者様も断りにくい雰囲気で 一方的すぎて 有難くも ない様にも ワタシには     思えるのですが 古井さんは ここのそんなお仕事 ? 全てに " 信念 ” を持っているようで 「 悪いけど 私!  ( 管理会社 ) から  ここ任されてるからさ!」            「・・・・」 ゼンブの事に関わらないと 気がすまない様です ちなみにワタシは  ご入居者様とは特別なお付き合いは 致しません し! 古井さんのこれに なにも言えません! なので これらのほかにも  古井さんは  ここのご入居者様のために と これは ここの建物のグレードに合った 二人がけ用の幅広の大型な 存在感の ある重厚で高級な フロントカウンターで この建物に入る前からも  その外からも見える  カウンターの前面なのに ? ここのかも分からない  風の強い日に 外に落ちていた落とし物の  それは地面に落ちていたから拾われた 洗濯物のパジャマや上着や シャツを ガムテープで 黒光りしている 大理石に 大きく広げて 貼り 『 ここを通れば    気づくからさ! 』 っと そのまま 落とし主の申し出が あるまで 貼りだしつづけているのです が! 何日たっても  誰からも申し出はありません きっと 入居者以外にもいろいろな人の 通るエントランスホールのカウンターに そんなふうに さらし物のようにされて は 恥ずかしくて 「自分のです」とは 言えないのだと思います それに そんなに 多くの他人に見られたものを 二度と 着たくはないですよね なので あんまりな 事態なので 何日か " 我慢 ” した後  ワタシは こっそり 片づけます そのころには 古井さんは もう  自分でした事なのに これを  忘れています でも また 落とし物があれば きっと同じことをするのでしょうが … 「 悪いけど 私!  ( 管理会社 ) から  ここ任されてるからさ!」 な 古井さんには  なにも言えないワタシです … 『 おかえりー! 』 今日も ここは 広くて 冷えるのか 寒がりな古井さんは猫背で小さくなり ポケットに手を突込んだままですが … 見晴らしの良い開放的なエントランスの 大きな自動ドアが開いた とたん に その大きな声は ここでしっかりと 響いています           「 ふぅ---- 」 『 なに ?』           「 … いえ 」              そして  とうとう …            或る日     それは突然 会社からのメールに 衝撃を受けた ワタシです " コンシェルジュへの重大注意事項 “ 入居者様から クレームが入りました … その内容は 明らかに ワタシが目撃 している古井さんの日頃の行動によるも のでしたが  会社は それを把握していないので ここに勤務している コンシェの全体責任としたのです ですが この " みな平等 に ” な  全体責任 ですが ワタシは  古井さんとペアを組んでいて 先に申しました通り  1年目の 新人ですし シフト勤務なので ここにはほかにも コンシェが 居て です が このとき気づいたのですが その 他のペアのコンシェも 全員 ほぼ 新人 で ここは  古井さん以外のコンシェは        入れ替わりが多く ワタシは それ にも いまさら 驚いた の ですが …   古井さんは 今回のそれを そのまま普通の回覧の様に受け取り 特に反省する事もなく  ワタシに 「 宜しく!」と        その書類を 回したのです … え-------!     ワタシ(新人たち)の        事じゃないのに-----          … え-------! 日頃の古井さんの あの! 著しく本来の業務から逸脱した! 自分アピール と!      スタンドプレー を!  ワタシ しっかり! 目の当たりにしているのにぃ ? … え-------!  "「 悪いけど 私!   ( 管理会社 ) から   ここ任されてるからさ!」”      って いっつも 云ってて! ここの責任者 ? の ? はず なのにぃ ?             なのに ?    しかもこれ! ぜったい! ぜったい! 古井さんの事なのに " 宜しく ” って ?          … え-------! タニンゴトじゃん!     ぅ--- わ! でも その様子      ワタシしか 観てないし! だから! 古井さんが自身で認めないと    これって証明できないじゃん! なら ? これってやっぱり ?          全体責任なの ? … え-------! だれか 助けてぇ----! ワタシのメンタル は …            もぉ----- そうだよね …            よくよく考えれば ワタシの前任も 1年くらいで辞めてるし …             これだから     皆 辞めちゃうんじゃないの ? なのにこんな " 全体責任 “ って ? こんな書類だけ廻されても これ 古井さん以外 ここに は まだ " マニュアルに忠実な ”         新人しかいないのに この " 重大注意事項 ” を全体責任と謂われましても 絶対に新人たちには         関係ないし  古井さんがこれじゃぁ!      責任とれません …   " どうにかしてください ! ” "「 悪いけど 私!  ( 管理会社 ) から  ここ任されてるからさ!」”         それ !  それ !  いま ! 謂って下さい よ ! この書類に  " 認 印 “ ?          " 確 認 印 “ ?    押印したくありませぇ----ん !  ? どうしらイイのぉ----- ? ぅ! だめだ! も!    ワタシ! 壊れ るぅ-----! この古井さん に! " 注 意 ” できる人!      どこに ? 居ますか ?    だれか お願い!  いますぐ! 呼んで下さ--- い! ― 『 おかえりー!』  「 … … 」     …スタスタスタ…           「 オカエリナサイマセ…」          … ぁ ~ あ … …… なんでこれ解んないんだろ …… も! 違いますよ 古井さん!    ご入居者様 怒ってますよ! " おかえりなさいませ!”って   マニュアルに記してありますよ! ―         「 ふぅ------ 」 『 なに ?』           「 … いえ 」 ― そして 先日 … さらに 驚きの新事実が … 社会人経験のある方は きっと  お分かりだったのかもしれませんが    ワタシはまだ新人で だし … 古井さんからも事あるごとに あまりにも そして なんども なんども 聞かされていたので      すっかり そうなのだと  ですが … この! 古井さんの キメ台詞 "「 悪いけど 私!  ( 管理会社 ) から  ここ任されてるからさ!」” は …         ですよ … 管理人さんから聞いたのですが …              これは           もうずいぶんと前 管理会社が変わった時に 訪れた当時の担当者が 帰り際の " 挨 拶 ” に 『 じゃぁ!  古井さんお願いしますね!』          と云ったそうで … それが こんなに 古井さんが いまでも 最強に各方面へ有効的に使っている あのキメ台詞 の " 真 相 ” ?        だ と ? の 事で …  だから 管理人さんたちは これ! 聞き流す程度の事 なんだとかで ? … ワタシはそれを聴いたとき 余りの衝撃に クレームのときよりも? ダメージが大きく? めまい が …           「・・・・」  … だったのですが                  もし!これがそうなら … 管理会社の人たちは 誰も   古井さんがこれを云い続けている事すら たぶん … で いまでは担当者も代わっているだろうし そんなこと引き継いでもいないだろうし おそらく 解っては いないと思います … この世の中って そうなんですね …       ほんと びっくりです … 『 だれか ------!   ここ!お願いしま --- ス!』      と! 叫びたい ワタシ です … ― 『 おかえりー!』  「 … … 」     …スタスタスタ…        あ … スミマ セ ン …      ワタシは ただ俯いてしまい         「 ふぅ------ 」 『 なに ?』           「 … いえ 」 ― そうです 古井さんはたくましいのです そして … そんな 古井さんは  今日も …  ここのご入居者様のためにと 頑張っておられます     「 あれ?          古井さん?       あ の ぉ … え ?        このセロリは?」 今日は なぜか セロリが … カウンターの上に置いてあります 「 ん? あ ! これ?   外に落ちてたからさ!」    「 え?      落ちてたんですか?」 「 ん! だから!  ここに出しておけば!     気づくからさ!」        「 あ のぉ … 」 … せめて 冷蔵庫に …  入れといてあげましょうよ …  ねぇ … 古井さん ?     セロリさんのために …        「 ふぅ------ 」 『 なに ?』           「 … いえ 」
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