女王の戴冠

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 フェルリスティアラ・ノート・ハイベルグストは、若干十三歳にして即位しながら、滅びかけた王家を立て直した名君であった。  臣下や民たちの声をよく聞き分け、善政を敷いた彼女はしかし、大きな変革を遺してゆく。  彼女は生涯結婚する事が無かった。後継を作る事で国が乱れるのを憂いた為、と歴史家は解釈するが、その真相は彼女しか知らない。  ともあれ、女王は晩年、王侯貴族制を廃止して、ハイベルグストを共和制に移行すると、自身は辺境にひっそりと隠居して、時折訪れる議員の相談に丁寧に答えを返した。  綺麗な長い白髪をさらりと流して、微笑みながらお茶を飲む彼女の傍には、一人の老騎士が常にいたというが、彼が誰であるか知る訪問者はおらず、ゆえに、どの史書にも彼の名前は残らないまま、現在に至るのであった。
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